第7章 君は陽だまり
「いや、人違いだと思う。邪魔したな。」
「そうかい?今日尋ねてきた客の中で女性はその子しかいなかったけどねぇ…。」
「あ…?そうか。んー、でも、ちょっと服装の特徴がちげぇんだ。悪かったな。」
あそこの店には女はそいつしか来てないというのであれば全く知らない女が尋ねてきたのだろう。
店を出るともう一度薬関係のことを思い出してみる。そういや、ほの花はよく葉っぱを煎じていたからひょっとしたら植木屋とかに行ったかもしれない。
植木屋もこの町には一店舗しかないのでいるならすぐに見つかるはずだ。
しかし、お目当ての店にもほの花の姿はなく、その店でも来店した女の特徴が先ほどの薬屋を尋ねた奴とまるで変わらない。
恐らく同一人物だ。
そして二軒の店主の両方にその女が聞いたことも一緒だった。
『西洋薬草はありますか?』
それだけ聞いてしまえばもうほの花だろ。って決めてしまいたいものなのだが、服装が如何せん一致しない。
ほの花はいつも華美でもなければ露出度も高くない服を着ているというのに聞くところそれぞれで"丈の短い服を着て、長い靴を履いた姉ちゃん"と言われる。
これは一体どういうことなのだろうか。
ほの花が今日に限ってお色直しでもしたということなら…多くの人間がアイツの生脚を見たということだ。
俺ですらあの按摩のときにチラリとしか見ていないというのに。
沸々と湧き上がる怒りで拳を握りしめる。
そしてお目当てのものが無いと分かればほの花がしそうな行動。
恐らくアイツは隣町にでもいってるはずだ。
目的がハッキリしているのならばすぐに買って帰ってくるだろうと思ったが、丈の短い服を着ていたということが本当ならば俺よりも先に他の男に見せたことになる。
「…おいおい、お仕置きだぞ。ほの花?」
少しでも見る男は少ない方が自分の怒りが収まるのも早い。
苛々とする心を戒めながら俺は町のはずれへと急いだ。