第7章 君は陽だまり
ほの花に口付けのお預けを喰らって、帰ってきたら嫌というほどしてやると決めていた。
偵察していた地域で鬼の情報があったので見に行ったが、十二鬼月でもなくただの雑魚だったのでその場で首を斬って終了。
しかし、行き帰りが時間がかかる。
元忍び故、誰よりも瞬足を誇る自分だから2日半で帰ってこれたがそうでなければ3日はかかるだろう。
3日ほの花に会わないなんて色んな意味で枯渇する。
あの可愛い笑顔で「おかえりなさい」と言われてぇ。
あの綺麗な声でいつもみたいに鼻歌を歌って欲しい。
あの吸い込まれそうな瞳に自分を写して頬を染めて欲しい。
そしてあわよくば腕におさめてこの前の何倍も口付けたい。
早くほの花に会いたくて仕方ない。
会いたいがためにこんなに早く帰ってきたと言うのに家に着いたらほの花の姿はない。
昼過ぎに出かけて行ったという目撃情報だけでどこに行くとも聞いていないというので仕方なく、家で待つことにした。
しかし、待てど暮らせどあいつは帰ってこない。
今日はお館様の家に行く日でもないのに、部屋には薬が広げてあって何かを探していたのか少しだけ散乱していた。
いつも綺麗に整頓された薬箱なので、こんな状態を見るのは初めてかもしれない。
(何か買いに行ったのか?)
部屋の惨状を見るにそれが一番近そうなので、町に行ってほの花を探してみることにした。
薬が散乱していたということは…薬屋か。
この町の薬屋は一軒しかない。
迷わずそこに入るとほの花の姿を探すが見当たらない。
「何かお探しかい?」
「いや、悪ぃな。薬じゃなくて俺の女を探してた。薬師なんでね。」
「女…?ああ、短めの丈の服に長い靴を履いた綺麗な姉ちゃんかい?」
「……ん?」
短めの丈に長い靴?
綺麗なのは間違いないのだが、ほの花は元々そんな露出を好むタイプじゃない。
恐らくそれはほの花ではないだろうと踏んだが、その後に言われた言葉で益々わからなくなってしまった。