第7章 君は陽だまり
宇髄さんが言ってたこと。
男に言い寄られたら…
①ぶっ殺せ
とりあえず無理。殺人は犯したくない。
②ぶった斬れ
上記に同じ。
③鎹鴉で呼ぶ。
現実的には③が賢明な選択だが、そもそももう任務から帰宅してるかも分からないし、迂闊に音花に助けを呼びにいかせてみても確実にすぐ来るとは言えない。
それならば、自分でサクッと何とかするのが一番。足の悪化が怖くてゆっくり歩いてたけど、こうなったら背に腹は変えられない。
私は彼を撒くために走りだす好機を狙う。
「そろそろ名前も教えて欲しいなぁ?僕は喜一って言うんだ。」
「へぇ、そうか。その喜一は俺のほの花に何をしようとしてんだ?」
「……え?」
その声はとても聞き覚えのある声。
でも、何故今なのだ。ちょうどいま、この人を撒いて帰ろうとしていたところなのに…。
「う、う、宇髄、さん…。」
「ちっとも帰ってこねぇから探しに来たら男に追いかけ回されてるたぁ、どういうことだ?ほの花。」
「え、や、そ、それは…!」
私ももちろん音もなく現れた宇髄さんに驚いているのだけど、隣にいた喜一という男性は自分よりも遥かに大きい宇髄さんを見て恐怖で震えている。しかも宇髄さんも宇髄さんでその人を視線で殺す気なのか?と言うほど睨みつけているので居た堪れない。
「う、宇髄さん。とりあえず、帰りましょう!お迎えにきてくださってありがとうございます!」
「あ?とりあえずコイツを血祭りにあげねぇと気が済まねぇ。」
「ち、ちま…?!ひぃっ!」
血祭りという言葉を聞いて益々震え上がってしまった喜一さんは逃げることもできずその場で腰を抜かしてしまう。
「宇髄さん、ちょ、ちょっと待って!大丈夫ですから!」
「俺は大丈夫じゃねぇ。俺の女に付き纏ってんじゃねぇよ。おい、こら。」
怒りで収拾付かなくなりそうだったので、前から彼に抱きつくことでまるで馬を押さえるかのようにトントンと背中を撫でる。
これでは本当にデカい猛獣相手にしてるみたいだ。