第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「…この行為が、終わるまで俺を師匠と呼ぶな。」
俺の願いは簡単だ。
この行為を師匠としてやりたくなかった。
一人の男としてほの花を抱きたかった。
男として見られないと言われているのは分かってる。
あわよくば名前で呼んでくれないだろうか?と思っていたのにそれはほの花から矢継ぎ早に発せられた言葉ですぐに幻に終わる。
「っ、う、ずい、さん…!」
宇髄さん。
不満はある。名前で呼んで欲しい。
だけど、これ以上望んでもほの花は呼ばない気がした。
頑なに師匠としか呼んでくれないほの花が苗字で呼んでくれただけでも進歩だと思わないといけないのか。
「…ああ、それでいい。」
下からガツガツと腰を打ち付けてほの花が善がるところを執拗に攻めれば何度も背中を仰反らせて絶頂を迎える。
この行為に愛はない。
ほの花からの…愛はない。
俺は…?
俺は……
分からない。いや、言えない。
でも、コイツをそばに置いておきたい。
まぐわいたい。
まぐわう為にはほの花の言う通り自分の女にしなければできない。
コイツを好きだと言ってしまえばもう戻れない気がした。
何が?
ほの花が此処に…いない気がした。
野生の勘に過ぎない。
ギリギリのところで踏みとどまった。
ほの花の言う通り、この行為を正当化する為に自分の女にしようとしたのかと言われればそれも否定はできない。
だけど、愛があったのかと聞かれたら…
それを口に出してはいけないと本能的に察したのだ。
愛し合うことはできない。
師匠だから?
継子だから?
違う。何かが壊れてしまうからだ。
「っ、ああああっ!!!う、ずいさ、ん!だめぇええええ!!」
再び体を震わせて達してしまったほの花を抱き上げて今度は四つん這いにさせると後ろから無遠慮に肉棒を突き刺した。
「ぅ、ぐっ…!」
もう顔は見なくていい。
本当は見たい。
口づけをしながら絶頂を迎えたい。
だけどそんな行為に意味はない。
ほの花が愛のない行為を所望しているのならば俺は卑劣な行為の贖罪で彼女に従う。
何も見ないから。
だから今だけ抱かせてくれ。
愛さなくていいから。
俺のためだけに善がれ。
今だけはソイツのことを忘れてくれ。