第7章 君は陽だまり
人間、無いと言われてしまうと途端に欲しくなってしまうのは性というものだろうか。
ここになければひょっとしたら薬草の苗や種なら売ってるかもしれないと思い、植木屋さんに顔を出してみればまた同じように「知らない」と言われてしまい、いよいよ焦ってきた。
それならば…!とまだ陽も高かったので、隣町の薬屋さんも覗いてこようと急足で歩いていく。
走っていけばもっと早く行って帰って来れるが生憎昨日転んで捻挫してしまってるので走るのは無理そうだ。
しかも初めて来る隣町は薬屋さんがどこにあるのか全く分からないため、仕方なく近くにいた人に聞くことにした。
「あの、すみません。」
たまたま近くを通った男性は人が良さそうな人で、呼び止めるとすぐに立ち止まってくれた。
「何か?」
「薬屋さんはどこにありますか?」
「ああ、それなら…この道をまっすぐ行って、五つ目の角を右に入るとすぐにわかると思いますよ。」
「ありがとうございます!助かりました。」
御礼を言って頭を下げるとすぐに言われた方向に向かって急ぐ。
早く帰らないと今日は宇髄さんが帰ってくるかもしれないし、みんなにも心配かけてしまう。
怪我をしたまま長時間歩いたことで足は熱を持ってきてるのが分かって不安が過ぎる。
(…大丈夫、大丈夫。帰るまで頑張って…!)
自分の足に叱咤激励をするような人は私くらいのものだろう。いつもいつも困ると宇髄さんが迎えにきてくれたりして、軽々と抱き上げて帰ってくれることに慣れてきてしまっていたせいで己の足を酷使するのは久しぶりすら感じる。
そもそもそれが間違ってる気がする。
宇髄さんは本当に私のことを甘やかしすぎだ。
頭のなかであってもどこかしらで宇髄さんのことを考えてしまっている私も大概彼のことで頭がいっぱいだ。
でも、そんな自分もまた新鮮。
彼に出会わなければこんな風に人を想うことはなかったかもしれないと考えると貴重な体験をしてると思わざるを得ない。