第7章 君は陽だまり
宇髄さんはやはり任務が長引いてるのか、場所が遠いのか、その日は帰ってこなかった。
彼に作り直した隊服を見てもらってから着た方がいいかとも思ったが、せっかく支給されたし私は翌日からすぐに着用することにした。
朝の鍛錬を終えるとまだ持っていくまでには日にちがあるが産屋敷様に渡すお薬の準備をして、今度西洋薬草(ハーブ)の薬膳茶もお渡ししようと思っていたので乾燥させた茶葉を見繕う。
──が、一番渡したかった"ぺぱーみんと"がない。
里から出てくる時に持ってくるのを忘れてしまったのだろうか。
だが、薬草などどこにでも生えているのだろうし、町に行けば売ってるだろう。
簡単に考えていた私は買ったばかりのブーツを履いて町へ繰り出した。
だいぶこの町の商店もどこに何があるのか分かり始めてきていたのでお目当ての薬草を取り扱っている薬屋に真っ直ぐたどり着く。
「いらっしゃい。」
さすが薬屋と言ったところで、入店すると薬のツンとした匂いが鼻を刺激するが、自分は薬師の母を持っているし、幼い頃より慣れ親しんだその匂いは特に気にすることもない。
「こんにちは。西洋薬草ありますか?」
サクッと買って帰ろうと思っていた。
この時までは。
でも、店主の人の返事に私は驚愕することとなる。
「西洋薬草?何だい?そりゃあ。」
「え?」
何だい?って言った?この人。
薬屋さんだよね、ここ。
薬膳茶飲まないの?そういえば…初めて宇髄さんに薬膳茶を出した時「変わった茶だな」って言われたのを思い出す。
カナヲちゃんにも最終選別のとき渡したけど、彼女は積極的に感想を述べるような子ではないので気付かなかったけど…
まさかこれって神楽家だけの風習だったの?
「あの、"ぺぱーみんと"とか"かもみーる"って聞いたことないですか?」
「いやぁ、無いねぇ。」
「そ、そう…ですか。ありがとうございます。」
別にこれは薬というわけではないから無くても産屋敷様の薬の調合にはなんら問題はない。
しかし、普段飲むお茶でも少しでも体にいい物を飲んで欲しいと思ったところだったので出鼻を挫かれて愕然としてしまった。