第34章 世界で一番大切な"師匠"※
不思議な同居生活も数日もすれば慣れてくるかと思いきや、最初の頃の気分の良さはどこへやら。
悶々としてしまうことが増えてしまった。
最低な考えだとは言え、俺も男だ。
妻がいないこの家で、意味わからないほど外見が美しい女とひとつ屋根の下で暮らせばそりゃあ邪な考えが浮かんでしまう。
しかも相手は口づけまでしてしまった上に、抜いたこともある相手だ。
俺の気分が最高潮に昂ってしまうのは仕方ない。
だから風呂上がりのほの花には極力会わないようにして、部屋に閉じこもる生活を続けている。
昼間はアイツらの様子を見に行くために遊郭らへんの偵察をして、夜は任務に向かうかそのまま遊郭の偵察をすることもあるが、決まって帰ってくるのはこの家。
そこで待ってるのはほの花。
自分がいない間、この家に侵入した奴はいないか?
広い屋敷でたった一人で待たせるのはかなり心配だったので、なるべく夜は家にいるように任務の調整をした。遠方の任務はなしにして、兼務している遊郭の任務を優先するために近くの任務に絞った。
鬼さえ倒して来れば家に帰ってきても特に文句は言われないのだから、俺は勝手にそうしていた。
ほの花のために?と言われたら間違いないのだが、アイツは自分の身は守れるくらいに強いし、俺に守られなくても大丈夫だとは思う。
しかし、俺が心配だったのだ。
いつもならば三人の嫁と元護衛達がいることで賑やかだから気にならなかったが、二人でいればがらんとしている。
そんなところに一人置いておくのは心配で仕方なかった。
かと言って胡蝶や不死川達、他の柱に預けようだなんていう考えは浮かばないし、このままここにいて欲しい。
それなら俺が早く帰ってそばにいてやればいいだろう?
そんなことはしないと思うが、いない間にまた知らないうちに恋人を作ったり、二人で逢瀬をしたり…なんてことを勝手にさせるわけにはいかない。
何故…?
……俺の継子だからだ。
俺の許可なしに他の男と恋仲になるなど言語道断だ。
志半ばで男にうつつ抜かすなんて今後は認めない。
自分は結婚しているくせにたった一人の継子にそんな自分勝手な思いを抱かれているなんてほの花は知らないだろう。
知らなくていい。
悟られたくない。
これは俺の勝手な想いだ。