第34章 世界で一番大切な"師匠"※
私ではダメなのか?
万が一、奥様達に何かあったらそれこそ大問題だ。
「駄目だ。怪しい店が3軒あると言ったろ?三人同時でなければ意味がない。」
「…で、でも…!そんな危ないことを奥様にさせるなんて…!私が代わりに…!」
「ご安心を。ほの花様。そのために我々も同行します。」
「え…?」
そこで声を上げたのがあろうことか私の元護衛の正宗。
正宗達が同行する?
同行って…、一緒に潜入するということ…?
「聞くところによれば、コイツらはお前の元護衛なんだろ?嫁達の護衛をしてくれりゃ、俺も助かるからな。」
「お安い御用です。必ずや奥様達をお守り致します。」
しまった…
煉獄さんの家に行っている間に話が進んでしまって、ほぼ纏まっているではないか。
「ふふ。ほの花さん、大丈夫ですよ〜!何かあれば逃げてきますし、鴉で連絡を取り合います。」
にこやかな奥様達に冷や汗が垂れる。
問題はそれだけではない。
いや、一番の問題はそれだ。
今までは同居人がいたから正直、誤魔化せていたことも、誰もいないこの屋敷でたった二人残されてしまえば、否が応でも彼と向き合わないといけない時間が出てきてしまう。
それが怖いのだ。
愼寿郎さんにはああ言ったけど、本人にバレるのは困る。
宇髄さんには最後まで気付かれたくない。
「…でも…!私のが継子なのに…!」
「お前はお館様の薬の件もあるだろ。長期間の家を空けることは出来ないはずだ。」
「……それは、そう、ですけど。その度に抜けてくれば…!」
「それじゃバレる可能性があるだろ。お前は適任じゃない。ここに残れ。」
何のために戦う準備をしてきたのだ。
彼を守るということは、彼の命の順序の一番である奥様達を守ると同じことなのに。
私がそこに入らなくなったとは言え、奥様達を危険に晒していたら彼はまた危険を犯すことになるかもしれない。
思い描いていた状況が遥か遠くへ消え失せて、私の頭は絶望感でいっぱいになる。
何が悔しいって
自分だけが蚊帳の外のこと。
自分だけが安全なところにいるということが悔しくてたまらないのだ。