第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「言い訳はしません。鬼舞辻無惨を倒すため、これが一番最善と判断しました。あなたの言う通りです。では、失礼します。」
もう彼は何も喋らなかったが、その代わりに手元にあったものを手当たり次第全て投げつけてきたので、頭を下げて部屋を出てきた。
しかし、そのせいで大きな物音に駆けつけてきていた千寿郎くんと廊下で再び会うことができた。
「ほの花さん…!父が何か…?」
「私が怒らせてしまったみたい。顔も見たくないと思いますが、薬を預けておきました。飲みたくなければ捨てて下さい。でも、また来ます。」
「ほの花さん…?」
「捨てられてもまた来ます。お兄様との約束だから。」
「……はい。ありがとうございます。」
御礼を言われるようなことはない。
むしろ御礼を言いたいのは私の方だ。
これでやっと戦える。甘えてウジウジしていた自分と決別できる。
覚悟を決めろ。
宇髄さんといつか元に戻れたら…なんて甘えたことを考えるのもやめろ。
戦う覚悟が出来ていない自分が何をしてもただの綺麗事だ。
誰からも嫌われてもいい。
でも、わたしは鬼を倒すんだ。
そのために全てを捨てた。
千寿郎くんに御礼を言って屋敷の外にでる。
外から煉獄さんに向けて手を合わせると「また来ます」と言って歩き出した。
約束は守る。
彼が望んだのは家族の健康。
どれだけ捨てられても約束は違えない。
宇髄さんとの約束も違えない。
そばにいると約束した。
どんな関係性になったとしても私はあなたのそばにいる。
瑠璃さんとも約束した。
必ず生き残って宇髄さんに本当のことを伝えると。
生きてなければ約束は守れない。
命ある限り約束は守る。
「…よし、帰ろう。」
私一人の命なんて大したことではないだろう。
鬼舞辻無惨の前には取るに足らない命だ。
たいして強くもない私は早々に殺されてしまうだろう。
だから珠世さんの頼みを受け入れた。
私の血が役に立つかもしれないと言われたから。
だから珠世さんに協力してもらった。
柱一人の戦力を確保するために。
大した権力もない私が鬼舞辻無惨を倒すために役に立てる方法はそれしかなかったから。