第34章 世界で一番大切な"師匠"※
ほの花は山奥の里出身だと言うことは知っているが、どんなクソ田舎に暮らしていたんだ。
まさか遊郭を知らない。
春を売るも分からなければ、身体を売るまでもが人身売買か?と聞いてくる始末。
最後のは薬師故の発言かもしれないが、思わずカッとなって馬鹿なのか?と声を荒げてしまった。
しかも、やたらと"不義"は駄目だと言ってくるほの花に首を傾げた。
嫁たちとのまぐわいは協力さえしようとしてくると言うのに、他の女とのまぐわいは全力で止めてくる。
「嫁たちが悲しむからやめろ」と。
確かに浮ついた心で他の女を手篭めにすれば、そう言われても仕方ないが、これは任務の内。
しかも、金を払ってまぐわうわけだから正直男と女の利害は一致している。
男は性欲を発散させることができて、女はその分の対価を得る。
売るものが物なのか自分自身なのかという差だけだ。
正直なことを言えば、俺はここ最近何度か試してみているが、やはり嫁たちでは勃たない。
よって暫くの間、誰ともまぐわっていないことになる。
しかし、男たるもの溜まるもんは溜まる。
仕方なく夜な夜な自分で欲を吐き出す毎日だったが、決まって頭に浮かぶのはほの花。
もうそれが当たり前になってきていて、申し訳ないとは思いつつも勝手に思い浮かぶものは止められない。
だから別の女だったら勃起するのだろうか?と思って試したい気持ちもあった。
それなのに全力で止めに入ってきたほの花に呆れると同時に腹立たしかった。
誰のせいで嫁とヤれないと思っているのだ。
俺だって嫁とまぐわっていればこんなに悶々とすることもなかったろう。
二週間前、ほの花の裸を見てからは特にほの花に性的欲求を感じるようになってしまった。
そのせいでこちらがどれほど心を無にしてほの花と接していると思っているのだ。
それなのに「奥様が悲しむから不義は駄目だ」なんてどの口が言うのだ。
嫁とはヤっていいのかよ。いや、いいか…。
性的欲求だけではあるが、ほの花に対して求めてしまっている。
しかし、目の前にいるコイツが俺を求めているわけではないことにも不満の一つだろう。
だったらお前が相手をしろよ。
なんて絶対言えないその言葉だけが頭の中を反芻した。