第34章 世界で一番大切な"師匠"※
不義とは男女間の道を外れた行いのこと。
潜入調査とはいえ、奥様たちがいるのにそんなことしたら三人が悲しむ。
そして…私だって嫌だ。
「はぁ?不義って…。俺は元忍だぜ?潜入して女とまぐわうことなんて…」
「だ、だ、駄目です!そんな…!奥様たちが悲しみます…!」
「アイツらもくのいちだ。そんなこと日常茶飯事なことくらい分かってる。何ぬるいこと言ってんだよ。」
ぬるい?ぬるいの?
仕事で女性とまぐわうことが嫌だと思うのは駄目なことなの?
独身なら…そう言う行為もいいと思うけど…宇髄さんは三人も奥様がいるのに…。
しかも、彼が私以外と交わったことがあるのは分かっていたけど、"それくらい普通だ"みたいな言い方を初めてされた。
宇髄さんは昔の女性関係のことなんて私に話したことはない。
それは…傷つかないように配慮してくれていたからだ。
「…とにかく俺はそこで潜入調査してくっからよ。アイツらのこと頼むな?」
「どうしてもそう言うことしないと行けないんですか?奥様悲しませていいんですか?」
「…ハァ…。あのな?さっきも言ったけどよ。仕事の内だ。不義を働きに行くんじゃねぇ。そこに愛はない。」
そうハッキリと愛のあるまぐわいをしに行くわけではないと言っているが、わたし的には納得ができずにいた。
違う、納得ができないのは"恋人だった頃のほの花"だ。
でも…そんなこと言われても宇髄さんは困ってしまうだろう。
何故怒っているのだ。
ただの継子のくせに。
「敵を知るには中に入らないと分からねぇだろ?」
「…それは…そう、ですけど。」
「ほの花、任務だ。鬼がいたとして、一般人がいるんじゃ慎重にやらなければならねぇ。分かるだろ?」
宇髄さんが言ってることが正論だ。
それは十分に分かってる。
不義とか言って嫌なのは私。
私が嫌なんだ。
「…そうですね。大変申し訳ありませんでした。師匠の任務に口出ししました。私にできることがあれば何なりと言ってくださいね。」
「…ん。まぁ、お前は師匠の帰りを大人しく待ってろ。分かったな。帰ってきたら按摩だ。」
「承知しました。」
行かないで
お願い
私以外と交わらないでなんてもう言えないから
せめて奥様たちだけにして欲しかった。
でも、私の願いは虚しく心の中で溶けていった。