第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「だ、だから!春を売ってる女がいるところに行くのは男しか行けねぇの!」
「…春を売るって何ですか?今は夏です。」
「……おい、お前どんなド田舎で暮らしてたんだよ。本気で言ってんの?」
宇髄さんの顔が本気で私を馬鹿にしている。
信じられないと言った目をして訝しげに見られるが、知らないものは知らないのだから仕方ないではないか。
「だ、だって…知らないものは知らないんです。教えてください…!」
「…お前、生娘じゃねぇよな?」
「な!と、突然何を言うんですか!!昼間ですよ?!」
「恋人がいたんだもんな、違うよな?」
突然の卑猥な話にそう言う行為自体が久しぶりすぎて恥ずかしくて下を向く。
でも、質問してくれた宇髄さんの顔は真剣だ。
…と言うことは揶揄っているわけではないということ。
仕方なく私は下を向いたままコクンと頷いてみると、宇髄さんは深いため息を吐いた。
そんな言いにくい話でため息吐かれるほどならばもう話してもらわなくてもいいか、と思い始めたところで再び宇髄さんが口を開く。
「…春を売るっつーのは、体を売るっつーことだ。遊郭は体を売ってる遊女たちがいるところ。俺はそこに潜入してくるからお前は来れねぇの。分かったか?」
「へ、…へ?か、体を、売る…?じ、人身売買!?ぞ、臓器とか売るってことですか?!」
「お前、このクソ馬鹿だな!?おい!女とまぐわう場所だっつってんの!!はっきり言わせんなよな!」
私のあまりの理解力の乏しさに堪忍袋の尾が切れたのかクワッと見開いたその顔は怒気を含んでいた。
しかし、怒られたことよりもその内容に私は耳を疑う。
体を売るとは人身売買ではなく、女とまぐわう…?まぐわいとは…要するに体を重ねる行為で…。
え、生娘かどうかを確認したのはこのため?!
そして男しか入れないと言うのは
女性が自分の体を売って男性がそれを買うということ?
遊郭というのはそんなことが繰り広げられているということ?
そんなところに潜入調査すると言う宇髄さん。
要するに遊郭にお客さんとして潜入するということ?
と言うことは…
「…し、師匠…!不義は駄目です…!」
嫌
いやだ、やめて。
元奥様たちだからあなたを諦めたの。
他の女性とまぐわってもらうためじゃない。