第7章 君は陽だまり
「何があったんだ?」
「あのね、私が力の加減ができなくてほの花ちゃんが転んじゃって足挫いちゃったみたいなのー!ごめんねぇ?ほの花ちゃんーー!」
「いやいや!そんな大したことないので!え、と…い、伊黒さんもお気遣いなく…!」
すると散らばっていた私の荷物を無言で拾い、蜜璃ちゃんに渡すと私に向き合ってくれた。
「お前は宇髄のところの継子だな?」
「あ、は、はい。神楽ほの花と申します…!」
「甘露寺がすまなかった。悪気はないんだ。許してやってくれ。」
伊黒さんが蜜璃ちゃんのしたことを自分がしたかのように謝ってくれるので隣にいた蜜璃ちゃんまでまた「ごめんなさいっ!」と頭を下げてくれた。
自分も受け身を取れなかったのも悪いのに誰もそんなことを責めないので逆に居た堪れない。
「いえ、本当に蜜璃ちゃんは悪くなくて…!私が受け身取れなかったので…!まだまだ鍛錬が足りませんね!」
「宇髄は確か今日は偵察に行くと言っていたから俺が送ろう。甘露寺も一緒に。」
「そうね!それがいいわ!」
私の話など聞いていないかのように話が進められると私に向かって背中を向けて屈んでくれた。
「え、…?」
まさかおぶされというのではないでしょうね?
この人私より軽いんじゃない…?私のが目方があるのでは…?!いや、無理無理潰れちゃう…!!
「何してる?運んでやるからおぶされ。」
やっぱりーー!!
自分は先ほど巣蜜のパンケーキをたらふく食べたところだし、身長が高い分それなりに目方もあるだろう。
宇髄さんに抱き上げられるとはわけが違う。
「いや、で、でも…わたし、重いので申し訳ないです…!」
「お前は馬鹿なのか?俺は柱だ。女一人くらいおぶれる。」
そうだとしても蜜璃ちゃんの想い人におぶさるなど私にはできない。
失礼を承知で私は宇髄さんをダシに使ってしまった。
「え、と…、う、宇髄さんに…他の男性に触れると怒られてしまう、ので。」
「……あー……。」
しかし、思い当たる節があるのか一瞬考えると伊黒さんは立ち上がって「確かにそうだな。」と言ってくれた。
自分で咄嗟に思いつきで言ったことなので内心「え、そうなの?」とこちらが肩透かしを喰らうことになるとは思わなかった。