第34章 世界で一番大切な"師匠"※
警備から帰ったら、瑠璃にももっと詳しく聴こうと思っていたのに、自分の部屋に入ると隣から聴こえてくるのは一人分の呼吸音とほの花の鼻歌だけ。
厠でも行ったのか?
そう思い、ほの花に見つからないように厠から洗面所やら一通りを探し回ったが何処にもいない。
要するに瑠璃はもう此処にはいないことを指している。
そこまで考えるとどうしても"出し抜かれた"という気持ちが強くなり、怒りの感情の矛先が向くのは当然ほの花だ。
俺は足音を立てるのも気にせずに真っ直ぐにほの花の部屋に向かうと、勢いのまま襖を開けてやった。
しかし、そこにいたのはほの花だけど、綺麗な白い脚が投げ出され、背中も露わになり、隊服の中に来ている薄手の下着のようなものだけの状態。
もちろんこぼれ落ちそうな胸まで目に入ってしまい、俺は固まりながらも目はそれを凝視してしまった。
ただ徐々に顔が赤く染まっていくほの花を見てしまうと、俺は慌てて外に出た。
悲鳴が聞こえたせいで嫁達と正宗達がどうしたのかと寄ってきたが「何でもねぇ!」と言って散らせた。
ドクンドクン…と胸の鼓動が煩い。
顔が熱い。
そして、下半身がまた反応しかけているのが分かって、前屈みになるというみっともない姿をするしか無くなる。
(…くっそ。情けね…。反応してんじゃねぇよ。)
女の裸(のようなもの)を見てしまえば反応するのは仕方ないことだ。男の本能だ。
仕方ないだろ?
そう言い聞かせている内に少しずつ治まってきたというのに、おずおずと襖が開き、そこから顔を出したほの花を見て再び自分の肉棒が反応してしまう。
「…あの、ごめんなさい。何か…?」
「……っ、る、瑠璃は帰ったのか。」
「はい、お帰りになりました。今お住まいのところが遠いので早めに出ないと夜になってしまうそうですよ。」
顔は見れない。
見れば何をしでかすか分からない自分に嫌気が差しそうだ。
俺には前科がある。
寝ているほの花に口づけしただけでなく、コイツで抜いちまったこともある。
これ以上、罪を重ねたくない俺は「そうか。」とだけ言うとほの花に悟られまいと逃げるように部屋に入った。