第34章 世界で一番大切な"師匠"※
瑠璃さんが徹底的に私との友達関係を強調してくれたことで、廊下ですれ違っても三人の奥様達に何かを言われることはなかった。
少しだけ心配そうな視線も感じたが、目が合えば微笑んで"心配いりません"と訴えかけた。
布団を隣同士で二枚敷いて天井を見上げていると、やっと彼女のことを聞く機会が訪れた。
ずっと私のことばかりさせてしまっていて、聞きそびれていたのだ。
「瑠璃さん、今どこにいるんですか?」
「山奥の村。」
「え?里には帰らなかったんですか?」
「ええ。もう抜けた。どうせ帰ってもつまんないし。」
正直、里に帰れば宇髄家の人たちに瑠璃さんが怒られるのではないかと思っていたので凄くホッとした。
「…そうなんですね。どんなところですか?」
「何か刀ばっかり作ってるとこ。」
「………ん?」
「あ、そう言えばあんたも知ってるじゃない。みたらし団子の男。」
それを聞いて私は勢いよく起き上がった。
刀ばかり作ってるところで、みたらし団子の男と聞いて思い浮かぶのは一人しかいない。
「え、え、は、鋼鐡塚さん?!」
「そうよ、蛍のとこにいるの。」
「えええ?!え、ひょ、ひょっとして…!」
「恋仲じゃないわよ。居候させてもらってるの。山奥をフラフラ歩いてたら偶然会ってね。誰かと思ったら甘味処で会った男だったから。」
今日一番驚いたかもしれない。
鋼鐡塚さんと最後に会ったのは花火大会の前だ。
煉獄さんが亡くなって間も無くのこと。
そんなこと一言も言っていなかったから知らなかった…というか話す機会がなかったのだから仕方ないが。
「そ、うですか…。」
「でも、まぁ…変人だけど私は結構好きなんだけどね。そっちの好きじゃないわよ。人としてね。」
「あ、…ああ。う、そう、ですね。良い人です。」
「絶対思ってないでしょ。」
「お、思ってます!みたらし団子頂いたし!武器も作って下さった方ですから!」
それだけ聞いたら物乞いした女みたいではないか。
何処にあるのかも定かではない刀鍛冶の里へ一人で行くのなんて至難の業。
でも、確かにここ最近鋼鐡塚さんはこの辺りに出入りしていたし、道中で瑠璃さんと出会ったのならば分からなくもない。