第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「…本当に天元様は了承してるんですか?」
まきをさんが辛辣な目で瑠璃さんを見ているので庇うように前に出るとにっこりと笑って頷く。
「はい!先ほど了承を頂きました!私の部屋に一緒に寝ますので、皆様は特に何もしてもらわなくて大丈夫です!」
「そうそう。お風呂もほの花と入るわ。それならいいでしょ?常にこの子に見張られてれば何の問題もないじゃない。」
「えぇ?!ず、ずるい!私だってほの花さんとお風呂に入りたい!!」
「ちょっと須磨!あんたは黙ってなさい!この馬鹿!!」
やはり須磨さんはこういう時に空気を和ませてくれる。途端に息が吸えた気がした。
しかし、目の前ではいつものようにまきをさんが須磨さんを小突いて一悶着起きているが、それを横目に冷静な雛鶴さんだけが私たちを見つめていた。
「…ほの花さんのことは信用しています。天元様が知っているなら…わかりました。」
「雛鶴さん…!ありがとうございます!!」
「そんな警戒しなくても何もしないわよ。さ、行きましょ?ほの花。部屋に案内して頂戴。」
「あ、は、はい!こちらです!」
瑠璃さんは凄い。
やはりくのいちだからなのか。ボロが出ない。
此処にきたことがないということを徹底的に体現してる。
此処に長い間住んでいたのに知らないふりをして、キョロキョロと辺りを見回して初めて来ましたということがわかるような態度をしてくれる。
正宗達を見て「あ、元護衛ね。よろしく〜」と言って初めてを装ってくれるし、私だけならばオドオドしてしまうところ本当に素晴らしい援護射撃だ。
「部屋は一番奥から二番目です。師匠のお部屋のお隣です。」
「あら、じゃあ天元の部屋に落書きでもしてやろうかしら」
「や、やめてくださいよぉ!私が怒られちゃいます!!」
「冗談よ、馬鹿ね。」
そんな軽口を叩けるのも瑠璃さんが誘導してくれるから。
疑われないように
違和感がないように
私を助けてくれる。
背中が痛い。
きっとみんなが私たちを見ている。
味方なのに敵の懐に自ら飛び込んだような緊張感がまだ消えない。
でも、私一人で帰っていたらうまくいかなかった。
瑠璃さんには感謝しかない。