第34章 世界で一番大切な"師匠"※
そんなこと言われても和解した記憶がないんじゃ、和解したからいいでしょ?と言われても理解が追いつかないのは仕方ないだろ。
俺だって出来ればこんなこと言いたくない。
ほの花のことを知りたくて仕方ないと言う気持ちを抑えられないのが気持ち悪い。
ただの継子に持つ感情ではないと分かっている。でも止められない。
「…ンなこと言われても覚えてねぇんだから仕方ねぇだろ。」
「勝手に置いていったあんたを探し出して問い詰めたわ。何としても里に連れ戻そうとしたらこの子に泣きつかれたわ。師匠を連れて行かないでって。」
「…へ?お、お前が…?」
「あ、あはは…」
瑠璃が隣にいるほの花を見れば恥ずかしそうに笑った。
ほの花が俺を連れて行かないでと言ってくれた?もちろん覚えていない。
覚えていないけど
嬉しかった。
「…だ、だって…師匠いなくなっちゃったら稽古つけてもらえないし…。」
俯いたほの花の顔は真っ赤に染まっている。
先日のような熱のそれではないのが可愛く感じた。
「だから暫くこの町にいてあんたを待ち伏せしてたりして説得を試みたけど結局折れなかった。だから和解に応じたの」
「まぁ、折れないだろうな。」
鬼殺隊として志半ばで折れるわけがない。
今の俺でも断る。
何度来られても同じことだ。
「何であの三人に会わなかった。」
「あんた馬鹿?私は置いて行かれたのよ。選ばれなかった嫁なの。みっともなくて会えるわけないじゃない。今は吹っ切れたし、ほの花とももっと話したかったから来たの。」
「…ほの花と恋人とは町に滞在してた時に会ったのか?」
「そうよ。二人でいるところを見かけたの。」
瑠璃の話には少しの隙もない。
ただコイツはくのいち。
本音を悟られないように取り繕うのは得意なはず。
じぃっと見つめてやっても、口角を上げるだけで少しも動揺していないのが不気味だ。
どうも手のひらで踊らされているような気さえする。
代わりにほの花を見れば、パチパチと瞬きを繰り返しながら何も言わずに見つめるだけの俺に首を傾げている。
話の辻褄は合ってる。
合ってるのに納得ができないのは俺の心がそれを拒否しているからなのか、それも分からない。