第34章 世界で一番大切な"師匠"※
必死になって隠そうとしているほの花には悪いが、真っ直ぐに彼女を射抜いてやる。
すると、俺の視線に気付いたほの花の瞳が揺れた。
(…悪ぃな、もう知ってんだよ)
俺は大きく息を吐くと、瑠璃を見た。
「俺、記憶の一部が無いんだと。だから知らねぇんだわ。」
「…っ、し、師匠…?」
何故知っているのだ?という表情のほの花と驚きを隠せない瑠璃とを交互で見た。
「悪ぃな、ほの花。胡蝶と不死川から聞いてた。隠す必要はねぇよ。」
「し、師匠…、も、申し訳ありません…!!」
その場で再び土下座をして地面に頭を擦り付けるほの花にため息を吐くと手早く手を取り立ち上がらせた。
「だーかーら、お前はすぐに土下座すんなって。ったくよぉ、隠すことねぇだろうが。」
「も、申し訳ありませんでした!私のせいで…!師匠を…!奥様達に申し訳がなくて!」
「ねぇ、どう言うことよ?記憶がないって何?」
瑠璃がそう言って食ってかかってくるが、俺に言われてもよくわからないし、不死川の話してくれた内容しか詳しくは知らない。
「…俺に言われてもな?ほの花。話してくれるか。」
すると、震えながらもコクンと頷くとゆっくりと話し出した。
「…瑠璃さん、さっき話した私の恋人の…話、の続き…があるんです…。」
ぽつりぽつりと話した内容は不死川が話してくれた内容と相違なくて、やはり本当のことだったのだと知れて良かったと思う反面、胸が痛んだ。
どこかで俺はほの花の恋人の話が嘘であってほしいと思っていた。
恋人が死んだ時、俺がコイツを庇って頭を打って記憶を無くした。
今も尚、深く心に残っているその男のことが忘れられないなんてことは嘘だと思いたかった。
しかし、瑠璃にはその男のことを話していたようで、ぎりっと奥歯を噛み締めた。
全て話し終えたほの花は憔悴しきっていて、これ以上責めたり、質問することさえ憚られる。
しかし、どうしても知りたいことがある。
コイツが何故、その男のことを知っているかだ。
「…瑠璃、お前は何でほの花の恋人のこと知ってんだよ。」
俺は記憶がないのは分かった。
でも、瑠璃は三人の嫁よりも接点はずっと少ないはずなのに知っていることに違和感があったからだ。