第34章 世界で一番大切な"師匠"※
茫然として二人の姿を見送ってしまったが、咄嗟に今行かないとアイツらの関係性を聞く機会はないと思い、慌てて追いかけた。
でも、二人の姿は既になく、流石の俺も耳を澄ませても足音を聴き分けることはできなかったので、仕方なく家に向かった。
ほの花と瑠璃に接点があっただと?
そんなことは知らない。
聞いたこともない。
しかも、俺は瑠璃と久しぶりに会ったはずなのに何で瑠璃は俺との再会をあんな普通に対応できるのだ?
俺はアイツを置いてきた男だ。
それなのにああもあっけらかんと…できるものなのか?
胸ぐらを掴まれて殴られるくらいの覚悟はあったというのにアイツはごく自然な態度だった。
しかし…俺の記憶が欠落したことで知らないだけでアイツらは覚えているかもしれない。
俺は嫁達に聞くため、大急ぎで家に帰ってくると、居間にいた六人の前で矢継ぎ早に言葉を投げつけた。
「なぁ、瑠璃って此処にきたことあるか?!」
俺の発言を聞いて目を見開く三人の嫁とキョトンとしているほの花の元護衛たち。
その反応だけで一目瞭然だ。
ということは…接点は此処ではない。
一体どこで出会った?
何故瑠璃はアイツを知っている。
悶々と考えていても手がかりがない以上、何も出てこない。
完全にお手上げだ。
真実を知るためにはあの二人に聞くしかない。
(…ちっ、何でアイツらをすぐに追いかけなかったんだよ。)
そもそも逃げた理由は何だ?
知り合いならば逃げずともいいだろう。
「瑠璃さん…とは?」
正宗がおずおずとそう聴いてきたので、俺は嫁達と顔を見合わせた。
そして雛鶴がコクンと頷くと口元を引き締めた後、話し始めた。
「…瑠璃さんは天元様のもう一人のお嫁さん候補です。しかし、里から抜ける時、考え方が合わなかった彼女だけ置いてきたんです。」
「…あ、あー…、そうですか…。瑠璃さん…瑠璃さん…か。」
しかし、何か言いたげな正宗に今度は俺が声をかけた。
「どうした。なんか知ってんのか?」
そうか。三人の嫁ではなく、コイツらはほの花と何でも話せる関係性だ。
ひょっとしたらコイツらが知ってる可能性もあるじゃねぇか。