第34章 世界で一番大切な"師匠"※
私は小一時間瑠璃さんの胸で泣き続けた。
橙色に染まっていた空は薄紫色になり、更に真っ暗になった。
それでも瑠璃さんの温もりが安心して、嬉しくて、一人で泣くのとは違う。優しさに包まれていてつい甘えてしまった。
私は本当に人に恵まれている。
こんなことしたのに優しくしてくれる人が周りにいることが本当にありがたい。
ひっく…と言う嗚咽が響いているその路地裏には私たちしかいなくて、先ほどまで大通りに行き交う人がたくさんいたのにそれもいなくなっていた。
「…ほの花。そろそろ帰らないとあの馬鹿が心配するんじゃない?」
「う、はい…。で、でも…疑われちゃうかも…どうしよう…」
瑠璃さんはもうこんなことやめておけと言うかもしれない。
でも、これに伴っていろんな人を巻き込んでしまっている以上、簡単にやめられるようなことではない。
私には責任がある。
「…どうしてもやめる気はないのね。」
「瑠璃さん…、私は…過ちを犯しました。やってしまった以上、責任は取らないといけないんです。」
「それであんたはいいわけ?」
「いえ、やっぱり宇髄さんが好きです。だから…、もし戦いが終わって私たちが生き残っていたら宇髄さんに打ち明けます。それでしっかり怒ってもらいます。」
正直、この件で鬼舞辻無惨を倒した後のことなんて考えてなかった。宇髄さんの記憶を消したらそれで終わり。
どうせ私なんて弱いし生き残ってないと思っていたからだ。
そんな心意気も間違ってるけど、煉獄さんですら亡くなってしまうのだ。
私なんてすぐに殺されてしまうだろう。
だからこそ宇髄さんの戦力は貴重だと言うことを痛いほどわかっている。
私なんかのために宇髄さんが死んだりしたら、鬼舞辻無惨を倒すために大幅な戦力低下は否めない。
柱はそう言う存在だ。
でも、そうじゃない。
私だって生き残って全てを打ち明ける。それこそが本当の意味での贖罪だ。
どうせ死ぬから宇髄さんだけでも。なんて間違ってた。
宇髄さんに真実を打ち明けて、彼の反応をそのまま受け入れることこそが私の贖罪。
やりっぱなしなんて駄目だ。
でも、その時既に御子がいらっしゃったりしたらその時は黙っておこう。
物の分別はちゃんとつけられる理性はあるつもりだ。