第34章 世界で一番大切な"師匠"※
瑠璃さんが呆れたように私を見ている。
頬は何度も引っ叩かれたし、額も弾かれて痛い。
でも、瑠璃さんもつらそうな顔をしているから黙ってそれを受け入れた。
私が彼女を再び傷つけたのは間違いないのだから。
「あんたはね、私の言ったように天元に甘えれば良かったのよ。…馬鹿ね、本当に。」
「もう遅いです。消してしまったし…、私が宇髄さんにしたことの罪は消えません。でも、瑠璃さんには本当に申し訳ないことをしました。せっかく…私のために…」
「あのね、私はアイツのことなんてもうどうでもいいの。此処にくるまで天元に借りたお金でも返すか…とか思いながら来たけど…」
そこまで言うと瑠璃さんの言葉が止まった。
どうしたのだろう?と思って顔を上げてみれば彼女の目に涙が溜まっていて、私は驚いて目を見開いた。
「っ、瑠璃さん…。」
「もっと…、早く来てあげればよかった。…あんたが思い詰める前に…。もっと話を聞いてあげれば良かったわね。急いで出て行かずに…」
「ち、ちがう!瑠璃さんが悪いんじゃない!私が…、わ、私が…!ごめ、ごめんなさい…!」
私が泣くのは間違ってるって分かってるのに瑠璃さんの涙がこぼれ落ちた瞬間私の目にも涙が分泌された。
必死に堰き止めようと試みていたのに、彼女に腕を引かれて抱きしめられてしまうと、ぽたりと一筋の涙が落ちた。
「誰も見てない。私しかいないから。泣きなさい。つらかったでしょう?一人で心細かったでしょう?」
何でそんなこと言うの?
私、酷いことしたんだよ。
瑠璃さんにも失礼なことしたんだよ。
なのにどうしてそんなに優しくしてくれるの?
「…わたしが、泣くのは、おかしい、っ!」
「馬鹿、強がるのはやめなさい。泣けばいいの。本当は天元と…一緒になりたかったんでしょう?」
そんなこともう口に出すことすら許されない。だから口を真一文字に噤めば、体が震えてきた。
まるで本音を言わせてと言うかのように。
だから最後だと思って瑠璃さんに向き合った。
「…瑠璃さ、ん…!宇髄さん、のお嫁さんに、なりたかった、よぉ…!」
「…そうよね。」
「あ、愛され、たかったけど……こんな自分が、一番嫌いだよ…!瑠璃さん…自分が嫌いで嫌いで仕方ないよ…!助けて…」
私はそのまま彼女の体を抱きしめた。
きつく、きつく、抱きしめた。