第34章 世界で一番大切な"師匠"※
私は天元達のところを出てから、里へは帰らずにあちこちを転々としていた。
すると、知り合いに会ったのでその人のところに身を寄せて、手伝いをするようになった。
天元にもお世話になったし、借りを作ったままだとちょっと癪なので菓子折りでも持って借りたお金でも返そうと思って久しぶりに町に来ていた。
ほの花といった甘味処のおじさんが私のことを覚えていてくれて声をかけてくれたり、店先で知ってる店主がいると懐かしくて実家に帰って来たような感覚になる。
ほの花は元気だろうか。
遠慮しいで本音を言えずにいたほの花が本当に心配だった。
初めは大嫌いな女だったけど、知れば知るほど放っておけない子だと思って、私が出て行く時号泣をしていたのが懐かしい。
私には本音で話せて、気持ちを聞いてあげられる存在だと自負しているけど、散々口酸っぱくなるまで天元に甘えろと言って来たから大丈夫だろうと信じていた。
それなのに…
天元のほの花との恋仲の時の記憶を消した…?
忘れ薬を使って?
理由を聞けば天元の同僚が戦闘中に亡くなったのだという。詳しいことは知らないが、何かと戦って生計を立てているような天元。
詳しいことははっきりと言わないので、聞かれたくないことなのだろう。
天元は豪快な性格だし、隠し事などあまりしない。その彼が言わないということは言えないということ。
だから私も詳しいことは知らないし、聞かなかった。
そのくらい昔のよしみで察するくらいの優しさはある。
だが、ほの花の言っていたことはあまりに唐突であまりに酷い。
何故この子はそんな風に考えてしまうのだろうか。
一緒に生きる道を模索できなかったのだろうか。
天元はあんなにもあの子のことを全身全霊で愛していたのに。
でも、問題はほの花だけじゃないことは私だってわかってる。
天元だって悪いのだ。
幸せになることを我慢してまで、あの三人に返そうと思ったのは、天元がちゃんと心の蟠りを取ってあげなかったからだ。
それは天元の過ち。
アイツがほの花を追い詰めた。
そしてほの花が終わらせてしまったんだ。