第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「師匠!?」
そう私を抱えていたのは他でもない宇髄さん。
突然の音柱の登場に善逸は失神。
伊之助は鼻息を荒くして臨戦態勢。
炭治郎とカナヲちゃんとアオイちゃんはキョトンとこちらを見ている。
「俺の継子が世話になったな。もう連れて帰ってもいいだろ?」
「あ…えっと、はい。大丈夫です。ほの花、またね!」
「え、ええ?!あの、師匠!善逸が!!」
「この倒れてる奴はお前らで何とかしろ。」
連れて帰るために此処にいたのだろうか。
何のためなのか全くわからないが、小脇に抱えられている状態の私はただただ目の前にいるみんなが驚いてる様子を見ることしかできない。
でも、唯一炭治郎だけが何かを悟ったかのように「分かりました!」と元気のいい返事をしたのを見ると、私の体は更に宙を舞った。
宇髄さんが飛び上がったからだ。
生温かい顔をして手を振っているその様子を見ることしかできずに五人が小さくなっていくのをひたすら見ていた。
でも、完全に見えなくなると上を向いて宇髄さんに抗議の意を表した。
「師匠ーー!離してくださいよぉ〜。恥ずかしいですよぉ〜。これじゃまるで荷物じゃないですか!」
「あ?仕方ねぇな?これなら文句ねぇのか?」
そう言って今度は私を抱きかかえる彼のせいで一気に距離が近くなり、驚いた私は体を仰反らせた。
「ひゃああ!近いぃっ!!」
「ば、馬鹿!暴れんなって!屋根の上だぞ!?落ちたら死ぬぞ!」
「…す、すみません。でも…師匠が急に変な抱え方するから驚いたんです。歩けるので離してください。」
「………何で。」
何で…?
え、何でって言った?
いま歩けるからって言ったよね、私。
まさか急に耳が悪くなったのだろうか。
訝しげな目で彼を見ると、バツが悪そうにしながらも渋々離してくれた。
「…ンだよ。黄頭に抱きつかれてたのは振り払わなかったくせに。俺は嫌だってか。」
突然そんなこと言われて驚かない人がいたら見てみたい。
それではまるで…
善逸に嫉妬しているみたいじゃないか。
私の背中に冷や汗が伝う。
違う、違うよね?
たまたま気に食わなかっただけだよね?
だってもし嫉妬していたら…?
私がしたことって一体何の意味があったのか分からなくなるのだから。