第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「ああああ、な、何か変な音がするぅぅ!!ずっとしてるぅ!!」
「音は分かんないけど、変な匂いがするんだよなぁ。」
蝶屋敷を出てからと言うものそんなことを言ってくる二人。
善逸と炭治郎だ。
常人では考えられない聴力と嗅覚があるから周りのちょっとした変化も感じ取れてしまうのだろう。
宇髄さんも聴力は凄いけど善逸ほどではない気がする。だけど、善逸はそれをまだあまりうまく使いこなせてない…のかな?
何だか怖そう。
まぁ、宇髄さんとは年齢も違うし、多感な時期だから仕方ないよね。
「えー?音も匂いもしないよ〜。ねぇ、カナヲちゃん。アオイちゃん。」
「そうだね。私はしないかなぁ。」
「私も!勘違いじゃなくて?」
三人で頷き合っていると、炭治郎はキョトンとしているだけだが、善逸が奇声を発し始める。
「チッガーーーーーウ!!さっきから怖い音が聴こえるんだよ!この世の終わりかと思うほどの恐ろしい…。ま、まさか無惨!?無惨なの?!」
「全く…今、昼だろ?善逸。」
「………ソウダケドモ!!!」
常人には理解できないことだけど色々大変なんだなぁ…。
私には理解してあげられないのが残念だ。
こわいよぉぉと言って縋りついてくる善逸の背中を撫でてあげながら鰻屋さんに向かったが、終始この二人はずっと同じことを言い続けていて、着く頃には誰も相手にしていなかった。
お目当てのお店に着くと大人数だったので座敷に通してもらい、鰻重を人数分頼んだ。
此処は懐かしの場所。
宇髄さんと二人できたことがあった。
二人で外食なんてほとんどしたこと無かったけど、甘味処以外は此処しか行ったことがない。
お互い忙しくて仕方ないとはいえ、もう少し宇髄さんと一緒にお出かけとかすればよかった。
そうすれば今頃思い出がたくさんできていて、それを懐かしむ時間があったと言うのに。
私と宇髄さんの思い出は本当に少ない。
一緒に里に帰ったこと
花火大会
温泉
数えるほどしかないその思い出。
たった九ヶ月の夢の時間では当たり前だが仕方ない。