第34章 世界で一番大切な"師匠"※
約束は11時。
時間ぴったりに行くと外でもう炭治郎達が待っていた。
「あ、ごめんごめん〜!お待たせ!!」
「ほの花!良かった!音柱の人に止められてるのかと思った!」
「え?いやいや、宇髄さんはもう私のことなんて気にしないよ。でも、お小遣いもらっちゃった!」
炭治郎が心配そうに近寄ってきたので、そう言って懐から麻袋を出してそれを見せると全員があんぐりと口を開けて固まった。
そりゃあそうよね?私もそうなったから気持ちはわかる。
「お、お小遣いって…どうして音柱様くれたの?」
アオイちゃんがおすおずと私の顔と麻袋を交互に見ながらそう言うので、首を傾げながら話の内容を思い出してみる。
「え?あー…何かしのぶさんにお世話になったからこれでみんなの分も払ってやれってことだと思う!鰻六人前以上入ってる!だから今日はみんな宇髄さんにご馳走になっちゃお!」
鰻なんて高級なものをたらふく食べられることなんて滅多にないし、宇髄さんのお気遣いに感謝しようとそう提案したのにみんなの顔は浮かない。
すると、善逸は震えながら私に縋り付いてきた。
「そうかなぁ…?俺はただの牽制だと思うけどぉぉっ!?"俺のほの花と飯食いに行きやがって"って言う!!おおおお俺たち、こ、こここころされるのかな?!」
「善逸落ち着けって…!ま、まぁ確かにその可能性もあるけど、殺されはしないって…!多少殴られることはあってもさ!」
私の横にいる炭治郎の顔を見て絶望的な表情を浮かべる彼に流石に私も不憫になる。
「ヒィィィッ!!な、な!殴られる?!何でェエエエエっ?!俺たち何にも悪いことしてないのにぃ?!ほの花と飯行っただけでぇ?!」
「何だよ、紋逸!殴りに来たら返り討ちにすればいいだろ?」
「出来るわけねぇだろぉおっ?!相手は柱だぞ?!スッゲェ強いんだぞォオオオオ?!?!」
「何?!そうなのか?!勝負してぇな!!どこにいるんだ?」
「やめろぉおおおおおおっ!俺を巻き込まないでくれェエエエエ!」
ああ…いや、うん。
私が悪かったよ。
コソッと…内緒でご馳走すればよかった。
宇髄さんがくれたよ〜!
↓
わーい!やったぁ!
ってなると思っていたよ。
これは完全に私が判断を誤ったのだ。
雄叫びを上げる善逸を見て申し訳なくて肩をすくませた。