第34章 世界で一番大切な"師匠"※
ほの花が断ってきたのは知ってるが、最近いい師弟関係を築いているから誘ったら来るんじゃないかと思ったら、今日鰻に行くし、明日はお館様のところに行くから行けないと言うことらしい…が!
同期に先越されたことが非常にしてやられた感がある。
たかが同期だろ?!
師匠との飯と一体どっちが……いや、明日はお館様のところに行くから仕方ない。それはお館様優先でいい。
が、今日行くだと?しかも男と!同期とは言え男と?!胡蝶ンとこの餓鬼が2人くっついてくるとは言え。
だからちょっとだけよぎったんだ。
その中の誰かが好きなんじゃないかって。
新たな恋が既に始まってるんじゃないかって。
こんな時ばかり「お前、恋人のこと忘れられねぇんじゃねぇのかよ!」と心の中でほの花を責め立てるが、それ自体謎の所業だ。
しかし、俺の考えは杞憂に終わった。
「好きな、人?え?今日行く子達の中にですか?全員好きですけど…?」
「…は?あー…そうか。特別な感情がある奴はいねぇんだな?」
「ええ?!居るわけないですよ!大切な同期です!」
「…ならいい。」
そんなことを気にしたとしても俺はただの師匠にすぎない。
仮に次の恋が始まったとしても、継子の恋路を邪魔する資格はないのだ。
親がいないほの花のために勝手に親代わりとでも思ってんのか?俺は。
「師匠?どうかしたんですか?」
「…何でもねぇよ。湯浴みしてこい。体が冷えてまた体調が悪くなるぞ。病み上がりなんだからよ。」
「病み上がりなんだと分かってる人の鍛錬の量じゃなかった気がするんですけど…。」
「何か言ったか?ほの花?」
「い、いえ!!いってきます!」
憎まれ口を叩かれても、こんなことは全然腹が立たない。
それよりも同期の連中と飯に行くと言うことの方が俺の中ではよっぽど重要事項でモヤモヤとしてしまう。
湯浴みに行くと言う後ろ姿を見送ろうとほの花の背中を見たが、悶々とした気持ちが自分の欲に負けた。
慌てて追いかけて手を掴むと、「わ!し、師匠?!」と言う動揺したほの花をそのままに部屋に連れ込んだ。