第34章 世界で一番大切な"師匠"※
自分は背が高い方だと自負しているが、宇髄さんは私のそれよりも遥かに高い位置から私を見下ろしてくる。
此処にきたばかりの時は、見下ろされること自体がとても嬉しかった。
だが、今はどうだろうか?
怖い
とてつもなく怖い
恋人としてのそれではなくただの師匠として睨みつけられたらもっともっと私の背中に冷や汗が伝うのは仕方ないと思う。
「え、えと、ど、同期、の…、み、みんなで…」
「だーかーら、誰とって聞いてんの。」
「か、カナヲちゃん…です。つ、栗花落!カナヲちゃん!ほ、ほら、しのぶさんのところの!」
「他には?」
「え…?」
いや、別に悪いことしてないよね?
だってただ私はこの前善逸がみんなで鰻食べに行こう!って言ってて了承していた。
その日にちがたまたま今日になったと言うだけ。
え、まさか師匠の了承がいるの?!
同期と出かけるのに?!
そう言われれば恋人時代にカナヲちゃんとどこかに出かけたことなんて無かったからお伺いを立てることなんてなかった。
まさかの今日が初のお伺い!?
「ああああああの、ぉ、そのぉ…ほ、本日はお、お日柄もよく…!し、し、師匠におかれましては…」
「お前何言ってんだよ。早く誰と行くか言え。」
私の決死のお伺いを物ともせずにやたらと食い気味で誰と行くか聞いてくる宇髄さんにもうたじたじだ。
「た、た、たん!じろ!と、ぜ、ぜぜぜぜんいつ!と、いのいのい、いのすけ!って子と…あああ、あとあ、アオイちゃんも!!」
「吃りすぎだろ。お前。やましいことでもあんのかよ。」
「なななない!です!何をおっしゃいますか!し、師匠が、なんかこ、怖いから…!め、目つきが…!だ、だめでしたか?」
「……別にいいけどよ。好きにすれば。」
明らかに不機嫌そうなのに了承してくれた宇髄さんに恐る恐る「ありがとうございます」と言うがその睨みは尚も私に注がれている。
今度は柱でなくて他の継子や隊士と馴れ馴れしくするなとでも言われるのだろうか?と戦々恐々としていると…
「好きなやつでもいんのか…その中に。」
「はい??」
突然放たれた言葉にあんぐりと口を開けて固まる羽目になった。