第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「へぇ、そうか。気をつけて行ってこいよ?で?だからって俺の誘いを断るってわけじゃあねぇよなぁ?ほの花?」
あたふたしているほの花にそう言ってやればブルブルと震え出して狼に襲われそうになってる子兎のよう。
須磨と約束していた"鰻を食べに行く''という約束。確かに一度ほの花を誘った時、自分は良いから行ってきてと言われたのは覚えてる。
だけど、最近じゃ割と良好な関係をきずいているからイケるか?と思って誘ったのがついさっき。
まさかの前日の今日に同期の奴らと行く約束があるなんて初めて聞いた。
しかも、鼻歌歌っちまうくらい楽しみにしているっぽいほの花に久しぶりにモヤモヤが頭を埋め尽くした。
「い、いや!あ、そ、そうではなく!!それとこれとは関係ないのですが、普通に産屋敷様のところに行く日なので…!」
「ふーん…?そうか。それなら仕方ねぇな。」
「は、はい!すみません…!では明日は私が正宗達に食事を作りま…「アイツらも連れて行く」…す、え?」
何やらキョトンとしているほの花だけど元はと言えばお前が言ったんだろ?
自分の代わりに正宗達を連れて行ってくれと。
だからその通りにしてやろうとしただけの話。
お前の手料理をアイツらだけ食うのも腹が立つのだ。作るなら俺にも作れってんだよ。
何で俺には作らねぇくせにアイツらに作るんだよ。
「…い、いいんですか?あ!では、お金を後で渡します!彼らの分!」
「お前な、俺のこと見縊ってんのかよ?アイツらだって此処に住んで色々してくれてんのは知ってるし、俺からの労いだ。金なんて持ってきやがったら鍛錬今日の十倍にするぜ?」
「ひっ!」と悲鳴をあげると勢いよく頭を下げて礼を言ってくるほの花。
余程今日の鍛錬が堪えたのか素直に言うことを聞くようなのでホッと一息つく。
「わ、分かりました。よろしくお願いします。」
「…誰と行くんだよ。その、同期って。」
お館様のところに行くのは仕方ない。それが彼女の仕事だからだ。
でも、今日の約束の件を師匠に言う必要なんて無いにせよ、弟子の交友関係を知っておくのも大切だと自分に言い聞かせた。