第7章 君は陽だまり
蜜璃ちゃんに部屋に押し込まれると、遠くの方からシャカシャカという何かをかき混ぜる音が聞こえてきた。
パンケーキを作ってくれているのだろうか?その音を聞きながら隊服に向き合うとごくりと生唾を飲む。
身につけていた着物を脱ぎ、面積の少ないそれに着替えていくと羞恥心で誰にみられているわけでもないのに顔に熱が溜まっていく。
蜜璃ちゃんの言う通り、これは恥ずかしい。
でも、私は蜜璃ちゃんのような長い靴下は持ってないし、胸元も開きも具合も気になる。
ただ胸元に関しては五芒星の首飾りがいい感じに防御してくれているので足が出ていることほど気にならない。
甘い匂いがこちらまで香ってきた頃、蜜璃ちゃんに声をかけられた。
「ほの花ちゃーん?着れたかしら?」
「き、着れたけど…、恥ずかしすぎるよぉーー!」
悲痛の心の叫びを出したはずなのに蜜璃ちゃんは何故か嬉しそうに飛び跳ねているのが影で分かる。
「私は女の子だし、見てもいいわよね?!入るわね!!」
了承の返事をする前に襖をドンと開ける蜜璃ちゃんにビクッと体を竦ませた。まぁ、彼女に見られたところで確かに同性だし、添い遂げる殿方を見つけると言っているくらいだから男性が好きだと思うので問題はないのだが。
「わー!わーー!可愛いわ!可愛い!ほの花ちゃん!きっと宇髄さんもイチコロよ!!」
「でも、丈が…。背が高いからこんなことになっちゃうのかな…?」
「あら、凄く白くて綺麗な脚なんだから別に出しててもいいんじゃないかしら?」
そう言う問題ではない。
脚を出したことなど一度もないのだから膝上手のひらひとつ分くらいの丈の短さを初体験すぎて白目を剥きそうだ。
「何か下に履こうかな…?モスリン(シフォン素材)の生地なら家にあるからそれを中に入れたら気にならないかな?」
「あら!それは可愛いと思うわぁ!うん!それなら丈も少し長くなるしいいわね!」
それでもまだ膝から下は丸見えだし、恥ずかしさは残るのでどうしようかと考えていると焦げ臭い匂いがしてきた。
「何の匂い?」と二人でキョトンとしていたが、パンケーキだとわかった瞬間、私たちは同じ表情をして台所に飛び込んで行った。