第33章 世界で一番大切な"継子"※
翌日、しのぶさんから退院して良いと言われたので、宇髄さんの屋敷に帰ってきた
…のはいいが…
「うぇ、どうしよ…めちゃくちゃ気まずい…」
発熱していたとは言え完全に宇髄さんに八つ当たりしてしまったのだ。
気まずいことこの上ない。
玄関の前でどうしよう…と行ったり来たりすること十五分近く。
一体どんな顔をしたらいいのか分からないのだ。
恋仲になった後ならば口づけをして、体を交わらせて仲直りもできたが、今回はそうもいかない。
ちゃんと言葉で謝って許してもらわなければいけない。
察してもらうこともできない。
だって宇髄さんは恋仲としての私は覚えてないのだから。
「…あぁあ…どうしよう…何て言えば許してくれるんだろう…。師匠、昨日は大変申し訳ございませんでした。破門だけはお許しください…!でいいかな…?」
これでもどうやって謝ったら良いか予行演習をしながら帰ってきたのだが、いざ玄関の前に到着してしまうと迷ってしまうのだ。
もっといい謝り方があるのでは…?と考え始めると止まらない。
だけど、こういうときは直感で一番最初に思い浮かんだもので勝負した方が良かったりする。
「やっぱり…、申し訳ございませんでした…!破門だけはお許しください…!にしよう…!あ!雑用何でもします…!!も付け足そう…!」
「おー、そうか。じゃあ、今日からお前は俺専属の雑用係も兼務しろ。」
「分かりました!お任せくだ、……さ、い?……ひぃぃいっ!」
え?誰かの声した?空耳?なんて思いながら後ろを振り向けば青筋を立てた宇髄さんがこちらを見下ろしていて、思わず悲鳴をあげてしまった。
「何だ、そのバケモン見たみたいな悲鳴は。失礼な奴だな。」
いや、まさか、急に此処にいるなんて思いも寄らなかったのだから仕方ないと思う。
でも、そんなことこの人に通用しない。
私はその場に跪いて頭を地面につけた。
「し、師匠…!昨日の無礼、本当に申し訳ございませんでした!どうか、お許しください…!破門だけは…何卒…!」
どこぞの君主に許しを乞う下働きの娘の気分だ。
いや、もうこの際それでもいい。
継子じゃなくてもいい。
ただの下働きの娘でいいです。
私は頭を地面に擦り付けながら必死に懇願した。