第33章 世界で一番大切な"継子"※
胡蝶はその後も病室に来て、点滴をしてくれたりして世話をしてくれた。
熱が下がらなかったのは脱水症状もあるからと言って、点滴から水分補給をしてくれていたようだった。
そんなこと俺には分からないことなのだからやはり此処に早めに連れてきてやれば良かったと後悔しかない。
でも、隣の寝台で横になりながらほの花を見つめていると少しずつつらそうな顔から穏やかな顔になっていくのが見られてホッとした。
一眠りしたら一度家に帰らないとアイツらも心配するだろう。
近くにほの花がいると言うだけでやたらと安心して眠りが深かったようで、気がついたら夕方で窓からは赤い日差しが降り注いでいた。
「…すげぇ寝てた…。」
"よっ"と起き上がるとほの花の寝台の横にあった椅子に腰掛ける。
額に触れてみればぬるま湯のような温度。
「…良かった、下がったのか。」
此処に連れて来たのが良かったのは明白だ。
家ではどうすることもできなかった。
虹丸から任務の指令は来ていないので、もう少しゆっくりできるかもしれないが、嫁たちに何も言わずに此処で眠っていたのだから心配しているかもしれない。
長い睫毛が伏せられて、栗色の髪が橙色の光にキラキラと輝いている。
頬に手を添えるともちっとした肌の感触が気持ちいい。
「…綺麗な肌だな、お前。」
ぷにぷにと感触を確かめるかのように触っていると小さな形のいい唇が目に入った。
目も
鼻も
唇も
全てが整理整頓されたように綺麗に収まっているほの花は本当に西洋人形のようだ。
コイツの元恋人という男も連れて歩くのに死ぬほど鼻が高かったことだろうな。
俺とどうこうなる気はないという確固たる意志があるほの花。もちろんあの嫁三人の手前、そういう気を起こしたら駄目なことくらいわかってる。
分かってるけど…
吸い寄せられるかのようにその唇まで顔を近づけるとそのまま己のものを押し付けた。
触れた瞬間、慌てて体を離したが時すでに遅し。
俺は
ほの花に
口付けてしまった。
絶対に超えてはならない壁を超えてしまった罪悪感で起きるまで此処にいようと思っていたのに静かに病室を出た。