第33章 世界で一番大切な"継子"※
宇髄さんの記憶が無いと言うことはほの花さんが望んでしたこと。
だからある程度の言動は我慢しているはず。
だけど此処に来たほの花さんは泣いたような跡があったし、宇髄さんがこんなに気まずそうなところを見るに一悶着あったのかもしれない。
「他の柱と馴れ馴れしくするな」というのは宇髄さんからすればただの嫉妬をぶつけているだけだが、ほの花さんからしてみれば頼みの綱を切られるようなことだ。
熱もあって体が弱ってるのだから余計に感傷的になっていたのかもしれないし、今も尚愛し続けている宇髄さんにそんなこと言われて途方に暮れてしまったのかもしれない。
本人しか詳しいことは分からないが、生憎彼女は酷い状態で暫く絶対安静だろう。
お館様だって具合が芳しく無いようだし、このままでは共倒れだ。
いま、お館様に倒れられるわけにはいかないし、準じてほの花さんだっていなくなられたら困る。
「…ほの花さんは此処に来ても礼儀正しくて良い子です。私に対してもとても気を遣ってくれます。」
「あー…だよなぁ。」
「分かってるなら二度と言わないで下さいよ?貴方にだけはそんなこと言われたくなかったと思います。信頼してる師匠にそんなこと言われたら自分は信頼されてなかったんだと思いますよ。」
「…そうだな。悪ぃ。」
「寝るなら其処使ってもらって構いませんが、点滴しながらよく眠ってもらうために少量の眠り薬を入れますので起きないと思いますよ?」
目の下にあるクマは体がつらくてなかなか寝付けなかった証。
いくらこの熱がいつか下がると分かっていてもその間に耐えるのはほの花さん本人だ。
あまりに酷い高熱はツラいだろうし、更に精神的にも追い詰められたとなれば余計に眠れぬ日々だったことだろう。
「ああ。それでもいい。そばにいてやりてぇから。」
宇髄さんの顔は清々しいほどに精悍だ。
何か吹っ切れたかのようなその表情に首を傾げたが、今の彼は此処で盛ることもないだろうし、そのまま病室を後にした。