第33章 世界で一番大切な"継子"※
あの三人によるとほの花の熱はまだ下がらない。
昼に解熱剤を飲ませたらしいけど、今はもう夜の6時。そろそろ俺は任務に行かなければいけない。
あまりに続くようなら蝶屋敷に連れて行かないと此処では医療は受けられないのだから良くなることないだろう。
ただの看護の域だ。
行く前にもう一度顔だけ見ていくか…と思って部屋に行くと、体を起こしてまた無理に笑おうとするほの花に顔を顰める。
「あー、いいって。寝てろ。」
「ありがとう、ございます。任務、ですか?いってらっしゃいませ…。」
火照った顔と荒い呼吸も何も変わらない。朝と同じだ。
喋るのもツラそうなのにこんなところにいていいのだろうか。
すぐにでも蝶屋敷に連れて行った方がいい気がしてきた。
「…ああ、お前…胡蝶のところ行くか?連れて行ってやるぞ?ツラいんだろ。」
「……いえ、大丈夫です。」
「でも、解熱剤飲んでも熱下がってねぇんだろ?」
「…もう少し、様子見させてください。大丈夫なので。」
頑なに拒否をするほの花だけど、俺に医学の知識などないし、薬師の彼女がそう言うならばわざわざ大袈裟に騒ぎ立てるのもよくないかもしれない。
いや、大袈裟にしたくなるくらいの高熱だけど。
「…分かったけど、とりあえず様子見すんのは明日までな。」
「……師匠は心配性ですね。」
納得してない様子だったのは気になったが、こちらは任務前。彼女の部屋の時計に目をやればそろそろ行かないと間に合わない。
話すのはまた明日帰ってきてからにしよう。
「弟子の心配しねぇ師匠はいねぇよ。じゃあ、ゆっくり休め。行ってくる。」
いつもは「いってらっしゃいませ」やら言ってくれるというのに何も言わずに微妙な顔をしたままの彼女を不思議に思ったが、時間に追われた俺は深掘りすることもできずにそのまま任務に赴いた。
その理由に気づいたのは翌日のこと。
任務から帰って来たのが遅くなってしまい、朝8時を過ぎていた。
部屋に入ると須磨が慌ただしく入って来たので顔を引き攣らせた。
「天元様〜!!大変ですー!」
「お前な、まずはお帰りなさいって言えよな。」
須磨らしいっちゃ須磨らしいが要件を言わずに慌てて入って来た彼女に呆れてしまった。