第33章 世界で一番大切な"継子"※
宇髄さんが出て行った後、まきをさんと須磨さんが立て続けに入ってきて、甲斐甲斐しく体を拭いてくれたり着物を変えてくれたりしてくれて申し訳なくてため息を吐いた。
どうせその内下がるのに…なんて口が裂けても言えないから彼女達にされるがままにおとなしくしていた。
「もう!ほの花さんったら熱があるなら言ってくださいよぉ!」
「そうですよ。全然気付かなかったです。」
「す、すみません…。疲れが出たんですよ。たまに出るので…」
疲れとはまた別の類だけど、もう嘘をつくのも罪悪感がなくなってきた。
すると須磨さんが「解熱剤はどこですか?」と探し出したので、薬箱の中にある旨を伝えると持ってきてくれていた白湯と一緒に渡される。
いや、飲んでも下がらない。
そして下がらなければまた怪しまれる。
できれば飲みたくない。
苦いし、無駄に薬を飲むのは避けたいから。
でも、心配そうにこちらを見ている須磨さんに私はその場凌ぎの言葉を発した。
「あの、何か食べてからにします…!そうしないと効きが悪いので…。」
「あ!そうなんですね?雛鶴さんのお粥そろそろできるかも!見てきますね〜!」
素直な須磨さんに救われたけど、お粥を食べたら飲まないといけないのは変わらない。
まきをさんが枕元に置いてくれた手桶の水に手拭を濡らして額に乗せてくれると気持ちよくて目を細める。
「ほの花さーん?駄目ですよー?無理したら。天元様も心配してましたよ?」
「…師匠にも御迷惑をかけてしまって、申し訳ない限りです…」
無理をしたわけではないんだが…
ただ治癒力使いすぎて今それの発散中なだけ。
体に備わったその能力は人を助けることができるがその分反動もある。
それは仕方ないこと。
今、産屋敷様に死なれるわけにはいかない。
きっと誰もがそう思っていると思う。
だからしのぶさんのところで様子を見た方が良かったのだ。
彼女ならばこの能力の勝手を知っているから下手に取り繕うこともなければ、彼女も私に多くの気を使う事はないだろう。
自然と治るのを知っているから。
宇髄さんに他の柱と馴れ馴れしくするなと言われなければこんなことにはならなかったが、師匠の命令に背くわけにはいかない。
私はただの継子なのだから。