第33章 世界で一番大切な"継子"※
「宇髄様、少し宜しいでしょうか?」
慌ただしくしていると突然声をかけてきたのはほの花の元護衛だと言う三人。
こうやって向こうから声をかけてくる時もたまにあったように思ったが、随分と久しぶりに感じた。
「どうした?」と言って向き合えば、少し会釈をしてから話し出した。
「あの、ほの花様が体調不良だとまきをさんと須磨さんに聞いたのですが…。」
「あー、そうそう。ひでぇ熱なんだわ。」
「でしたら、我々が看病を代わりますよ。奥様達の手を煩わせることありません。」
さも当たり前のようにそう言うのはきっと昔からほの花を知っているからだと思う。
アイツらにとってほの花は妹のような存在だと聞いたことがあるし、その発言は何らおかしくはない…が…
「着替えもあるからアイツらに頼んだ。その方がいいだろ?」
「あはは!そんな!ほの花様にそう言う気なんて起きませんよ!お風呂だって一緒に入ったことあるのに。」
「…あー…、いや、でもよ…嫁入り前だし、よ。」
「次は我々が替えますので大丈夫ですよ。」
正宗達が踵を返してその場を去ろうとしたところで俺は思わず呼び止めた。
何故呼び止めたか。
そんなことはもうどうでもいい。
嫌だった。
ただそれだけ。
「やっぱりいいわ。嫁にやらせるから。お前らはその代わり嫁達の手伝いをしてくれ。」
反論の余地を与えないために俺は言葉を投げつけるとその場を足早に去った。
確かにアイツらとほの花は兄妹のように育ったと言う。
その時のことは俺なんかには分かりっこないし、想像することしかできない。
風呂に一緒に入ったことあるのも子どもの頃の話だとは思うが、アイツの裸を見たことがあると想像するだけでも心がもやつくのだ。
ほの花に変な気など起こさないと断言していることも自分が変な気を起こしてしまったことに後ろ指を差されているように感じた。
師匠という立場がありながら弟子相手に勃起させるなんて正気の沙汰でない。
だけどそんなことを知られたくない。
誰にも。
ひた隠しにするしかないのだ。