第33章 世界で一番大切な"継子"※
思っているよりもずっとほの花の体調は悪そうでうっかり着替えを手伝うなんていう申し出をしてしまったが、彼女が断ってくれたことでホッとした。
正直、コイツの体を見てしまったらまた俺の肉棒が反応してしまうことなんて想定内だ。
それもこれもコイツの外見がクソ可愛いせいだ。
反応しちまうのは…ほの花の容姿が好みなのだろう。
そのせいでうっかり性的対象として見てしまったのは俺が精神的にまだまだ鍛錬が足りない証拠だ。
嫁以外にこんな気持ちを持つだなんて失礼にも程がある。
しかも、コイツは弟子だ。
「…じゃあ、俺は寝る。何かあれば言えよ。」
「は、はい…。」
深々と頭を下げて、顔を上げたほの花は肩で息をしながらも微笑んでいる。
本当は此処にいて看病でもしてやりたいが、邪な気持ちを持った俺が此処にいるとどんどん欲求が強くなるだけだ。
朝、他の奴らが起きたら看病を頼めばいい。
そう考えると俺は立ち上がり、自分の部屋に戻って行く。
やはり部屋なんて替えるわけにはいかない。
体調不良に気付けたのも隣の部屋だったからだ。
屋敷に何者かが侵入すれば気配で分かるが、流石に広すぎる屋敷を構えたせいで遠くの部屋で寝られたら体調の変化など気付けるはずもない。
しかも、距離を置こうとしている継子だ。
それで距離まで置いてしまえば何にも気付けなくなる。
部屋に入ると隊服を脱ぎ捨てて、夜着を出すために箪笥を開ける。
いつものところに入っているそれを取り出すと、下の方に大切そうに和紙に包まれた着物が目に入った。
(…こんな着物あったか?覚えてねぇな…)
それも取り出して漸く明るくなり始めた日の光を当てて中身を確認してみる。
現れたのは品のいい浴衣。
柄も色も控えめだが、それを見た瞬間ドクンと胸が跳ねた。
「…自分じゃ…選ばねェけど…、アイツらの誰かに選ばせたのか?」
最早此処まで来ると記憶がないことに深く考えるのをやめるようになっていた。
考えたところで思い出さないのだから。
でも、脳裏に浮かんだのはまたあの女。
靄がかかっていてはっきり見えない女。
記憶の中に閉じ込められたその女がまた俺の前に現れると口元だけまた笑うんだ。
その笑い方が先ほどのほの花に似てる気がしてまたもや頭を振った。