第33章 世界で一番大切な"継子"※
案の定、高熱に魘される羽目になった私は何とか夕餉は食べたが、食べ終わるとそのまま死んだように布団にくるまって寝てしまっていた。
奥様の誰かが外から声をかけてくれた気がするが、寝ている私にそっとしておいてくれたんだと思う。
暑いし体も熱いけど、悪寒がする。
体が寒い時はまだ熱が上がりきっていない証拠。
まだ上がるのか…と思うと絶望感に苛まれたが、気にしないふりをした。
気にしてしまうとどんどんと体は重くなるばかりだからだ。
それなのに明け方、誰かに起こされたかと思うと宇髄さんで必死に頭を働かせようと瞬きをしたが、碌な考えも浮かばずまろび出た言葉にまた怒らせてしまった。
"着替えて寝ろ"
というのがいまの師匠命令だと言うことだけは分かるので、私は肩で息をしながら箪笥に向かうため這って移動し始める。
人間たるものもちろん立って移動するのが常だとは思うが、今の私はフラフラで立ち上がったが最後ぶっ倒れるのが関の山。
消去法で四つん這いになりながら四肢を動かせば、後ろから呆れたようなため息を吐かれて、次の瞬間体が宙を舞った。
「ひゃ、あっ!!」
「静かにしろ。他の奴らが起きちまうだろ?どれが取りたいんだよ。このまま取れ。世話の焼ける弟子だな、お前。」
「すみ、ませ…」
どうやら宇髄さんが抱き上げてくれたのは間違いないが、この状況がまずいとも取れるし、嬉しいとも取れて頭の中は揺れ動く。
それでも熱に浮かされた頭では考えを続けることもできずに、宇髄さんに指で指示をすると箪笥の中の夜着を取り出した。
「ん、それだけでいいか。」
「は、はい…!お手数を、おかけしました…!」
夜着を手にした私を再び布団に横たえてくれる宇髄さんにもう一度頭を下げてお礼を伝える。
「…ありが、とう…ござ、います…。」
「いいけど…一人で着替えられっか?」
「……一人しかいないので…頑張ります…」
誰かに手伝ってもらうほど弱ってはいないと思いたいし、今の宇髄さんに手伝ってもらうことは絶対にできない。選択肢にない。
それなのに…
「…手伝ってやろうか?」
そんなことを言うあなたに泣きそうになりながら首を振って断る。
あなたに触れることも
触れられることも
どちらも今の私には選択できないことだから。