第33章 世界で一番大切な"継子"※
お館様は大丈夫なのか?
最近、行く頻度が高い気がするし、今日も突然の呼び出しだ。
ほの花が薬師として信頼されているのは僅かな記憶の中でも分かるので、慌てて出て行った彼女に心配は募る。
しかし、今日も新たな鬼の情報を得たため調査のために昼間から出かけなければいけない。
距離を置きたいと思っているのに次々といろんなことで話題を提供してくれる継子のせいで、部屋の移動のことは話さなければいけない。
…ついでに昨日は少し…言いすぎたことも謝っても…いい。
割と近くだったこともあり、昼間に出てきたがついでに夜の警備もして行くかと鬼の出現情報の元、町を巡回していると運良く鬼と鉢合わせすることができたので秒で滅する。
(…….今回も雑魚か)
未だに上弦の鬼に会わないのは残念だが、煉獄ですら負けるのだ。俺だって無傷では居られないだろう。
それでも鬼殺隊に身を置いている以上、自分の身が傷つくのは仕方ない。
俺が守るべきは嫁達だ。
どんな状況になってもあいつらだけは必ず守り通す。そう決めている。
でも…今日の俺は変だ。
そうやって頭に浮かべるのは雛鶴とまきをと須磨のはずなのに。真っ先に浮かんだのは靄がかった女。
顔は見えない。
ただ、間違いなく嫁達ではない。
(…誰だ、お前。)
頭の中の話だ。いくら目を細めても見えるわけがないのに口元はニコッと笑っている。
どこかで見たことあるような…?
どことなくほの花と似ている気もしたが、そんなわけない。
ほの花ならばすぐに顔を思い浮かべられる。
ただ俺の中で誰かが封印されている…そんな感覚だった。
振り払うように頭を振ると他に鬼がいないのを確認して、夜明け前にはその場所を後にした。
疲れているのかもしれない。
今日はゆっくり休もう。
疲れているから碌でもないことを思い浮かべるのだ。
屋敷までは数十分の距離。
急ぐ必要もないが、虫の知らせなのか早く帰らなければいけない気がした。
ゆっくり休もうと思う反面、よくわからない焦燥感に首を傾げるしかない。
ただ屋敷に着き、自分の部屋に入った瞬間、俺は眉間に皺を寄せる羽目になった。