第33章 世界で一番大切な"継子"※
あまね様に咳止めを入れた薬膳茶を入れてもらったのでそれを持って産屋敷様のところに戻ると力を使ってしまったことで少し持ち直したようで先ほどよりも楽そうだった。
「産屋敷様。薬膳茶をお持ちしました。お飲みになれますか?」
「ああ、ありがとう。飲めるよ、戴こう。」
手に持っていた湯呑みを渡すとゆっくりとそれを口に含み嚥下した彼だけど、苦笑いをしたその表情に同じように苦笑いを返す。
「…相変わらず、凄く苦いね?」
「ふふ…申し訳ありません。今回は我慢していただけますか?次回はもう少し苦味を抑えたものを持って来ます。」
「ありがとう、ほの花。…本当はね、別のことで今日呼ぼうと決めていたのだが、思ったよりも体が悪くて薬師として頼ってしまったね。」
「…別のこと…?何かご用事だったのですか?」
私は漸く落ち着いて薬箱に向き合うと、咳止め薬の処方のために薬を何包か取り出した。
先ほど力を使ってしまったせいでだんだんと体が怠くなって来ていたのが分かるけど、大きく息を吸い体がぶれないように背筋を正した。
「うん。…あまね!」
産屋敷様がそう言うと控えていたのだろうか?あまね様が襖から入ってきて、不思議そうに見てしまった。
用事なのであれば先ほど薬膳茶を頼みに行った時に承れば良かった…。二度手間をさせてしまった。
「はい。お持ちしました。…どうぞ?」
あまね様が私の前に跪くとお盆を置いてくれた。
そこに乗っていたのは日の光にキラキラと輝いた寒天が美しいあんみつと湯呑みに入っているのは香りの良い煎茶。
「…え…?よ、用事って…、こ、これ…ですか?」
「うん。きっとほの花は天元のことで色々気を揉んでいると思ってね?少しくらい何も考えずに甘味を食べる時間が必要ではないかと思って用意したんだ。甘味が好きだったろう?」
前も…こんなことがあった。
ごはんを食べずに没頭した時だ。
此処で甘味を頂いてしまった。
先ほど、一度鼻がツンとして我慢したと言うのに今度は溜まった涙が我慢できなくてそのまま畳を濡らした。
「…っ、あり、がとう…ございま、す…!」
人の温かさに触れれば触れるほど、自分が情けなくてたまらない。
もっと強くなりたい。
何物にもブレない心の強さが欲しい。
そうしたら少しは自信が持てると思う。