第33章 世界で一番大切な"継子"※
目が覚めると正午近く。
朝方、ほの花に酷い物言いをしてしまったが…彼女は家にいるだろうか。
不死川と仲が良いことに若干苛ついてしまったのはそれより前に俺がそばにいたことを言えないことへの不満がたまったことに他ならない。
要するに八つ当たりだ。
悪いことをしてしまったと湯浴み後にほの花の部屋を訪れようとしたが、既にそこは暗くなっていて寝息が聴こえてきたのだから声をかけることは叶わなかった。
のそりと布団から起き上がるといい匂いがしてきた。ちょうど昼餉の時間のようだ。
夜着を脱いで隊服に着替えると静かに隣の部屋に耳を澄ましてみる。
しかし、ほの花の声や物音は聴こえてこないので、そこに人はいないと分かる。
…となればどこに居るのだろうか?
襖を開けて庭を覗いてみると嫁達が三人揃って座って談笑していた。
「あ、天元様!おはようございます!」
「おー、はよ…ん?」
元気よくまきをがそう声をかけてくれたが、三人とも此処にいると言うことはこのいい匂いの正体は…?
「…三人で何してんの?」
「ほの花さんが昼餉の支度を代わって下さったので此処でおしゃべりしてました。」
「あー…なるほどね。」
ということはほの花は台所にいて、料理を作ってるわけね。
また…アイツの手料理が食べられるとなったらにやける顔を抑えるのに必死だが、酷い物言いをしてしまったことでまさか出て行ったりしていないか…少しだけ心配だったのでホッとする自分もいた。
まぁ、この中にいたとしても…顔を見る勇気もなければ距離を置くと決めているのだから下手に近づくこともできないが。
コイツらが此処にいるということはまだ昼餉には早いということ。
俺は三人が座っている隣に腰掛けると空を見上げて時間を潰すことにした。
すると、徐にまきをが俺に茶を渡しながら話しかけてきたので、受け取った茶を啜りながら聞くことにした。
「天元様ー?」
「んー?」
「ほの花さんが夜の夫婦生活の邪魔になるから部屋の移動をしたいと言っていましたけど…聞きましたか?」
「っぐっ!ッ、ゴホッ、は、…っ、はぁ?!」
聞かれたことがあまりに唐突で開けっ広げな内容だったので飲んでいた茶を盛大に誤嚥すると咽せながら眉間に皺を寄せた。