第33章 世界で一番大切な"継子"※
鍛錬を終えて、昼餉の支度を終えたところで宇髄さんの声が聴こえてきた。
それは縁側らへんで奥様達の声も聴こえてきた。
何を話しているがまでは聴こえてこないし、聴こうとも思わないので、私はまな板に向けられた目線を変えることはなかった。
材料を切ると雛鶴さんの献立通り、野菜の煮浸しと魚の南蛮漬けと味噌汁を作ると、お釜から湯気が出てきた。
お米の炊ける匂いは食欲を唆る。それを見ると少し火を弱めて弱火でお米が炊けるのを待つ。
宇髄さんは私が料理を作ると美味しそうに全部平らげてくれた。それが嬉しくて家事をしたくてたまらなかった時期もある。
今は…奥様達にやってもらった方が嬉しいだろうからあまり出しゃばれないけど、此処で居候させてもらっている以上、少しくらいはやらなければいけない。
「ほの花様?運びましょうか?」
「あ、うん。お願いできる?」
正宗達が配膳のために台所にやってきてくれたので、私は出来上がったものをお皿によそい、それを彼らに託した。
お米はあと蒸らすだけで炊き上がるだろう。
すると、台所の窓を鎹鴉がツンツンと突いているのが目に入った。
誰の鴉だろうか?と思ったのは束の間。
それが産屋敷様の使い鴉だと分かると背中に汗が伝った。
「ほの花ーーッ!!産屋敷邸へーーッ!!」
「え…!産屋敷様に何かあったの?」
「産屋敷邸へーーッ!詳シクハ知ラナイーーッ!
「……あ、そ、そうなの?分かった…!」
私は残りを急ぎ、居間に向かうと正宗達に産屋敷邸から呼び出しがかかったから行ってくる旨を伝えた。
「あとやることは…?」
「ごはんがあと少しで炊き上がるからよろしく!!師匠に伝えてくるから!」
「分かりました。お気をつけて。」
折角、夫婦の団欒を邪魔して申し訳ないが、急いで彼の部屋の前まで行くと私は外から声をかける。
「師匠、急ぎお伝えしたいことがあります。入っても宜しいでしょうか?」
「ああ、入れ。」
一礼して、襖を開けるとそのまま頭を下げて話し出す。
「産屋敷様邸より呼び出しがありましたので急ぎ向かいます。食事はあとご飯が炊けるのを待つだけなので正宗達に託しました。」
「そうか。気をつけて行けよ。」
顔をあげても彼は私をみていなくて目が合うこともない。
それが私たちの今の距離感。