第33章 世界で一番大切な"継子"※
宇髄さんの言いつけ通り、湯浴みの準備をすると、布団に潜り込み目を瞑った。
こんなことならば寝ていたら良かった。
そうすれば彼を怒らせることはなかった。
今更どうこうすることもできないので布団を頭までかぶると数時間眠りについた。
夢ならばあの"宇髄さん"が出てきてくれるかと思いきや、深く寝入っていたのか彼の夢を見ることなく、見慣れた天井が目に入った。
壁にかけられた時計は7時半を指していて、すっかり朝餉の支度には間に合いそうにない時間帯だった。
のっそりと起き上がると、夜着を脱ぎ捨てて隊服を身につけた。
宇髄さんは湯浴みをしてから眠りについたのだろうからまだ眠っているだろう。起こさないように物音を極力立てまいと気をつける。
鍛錬はしなくていいと言われたけど、1日怠けてしまうと次の日の体の重さが違う。
居間に向かうと既に朝餉が並べられていたので、そこにいた雛鶴さんに一声かける。
「すみません…寝坊してしまったので、鍛錬をした後に頂いてもいいでしょうか?その代わり後片付けと昼餉は私が準備します。」
「え?それは…いいですけど、そんな気にしないでください。大丈夫ですから。」
そう言ってにこやかに笑ってくれる雛鶴さんだけど、こちらの勝手な都合で夜更かしして、朝寝坊したのだ。それくらいしなければ私自身が気が済まないと言うものだ。
「献立を教えて下されば作っておきます。どうぞ皆さんはゆっくり休んでください。あ、お出かけされてもいいですよ?」
「でも…」
「自分勝手に朝寝坊してしまったので、そうさせてもらえると少しは気が楽なんですけど…。」
「そう言うことなら…お願いします。献立は台所に紙で置いてありますので…。よろしくお願いします。」
申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げてくれる雛鶴さんだけどそれはこちらだ。
私の方が申し訳なくて仕方ない。
彼女の了承を得たので、私はいつもの準備運動をやるために庭に出ると無心で腕立て伏せから始める。
筋力が付きにくい私のために宇髄さんが新しく考えてくれた鍛錬をちゃんとしたい。
"私のために考えてくれた"と言うことが本当に本当に嬉しいから。
それをしている時は彼の想いの中で溺れていられる。