第7章 君は陽だまり
宇髄さんは少し遠くに任務に行くらしくて朝起きるともう既にいなかった。
主人のいない部屋を少しだけ覗いてみるとガランとしていて少し寂しい。
朝の鍛錬も一人でやるのは物足りない。
今までだってこんなことはあったのに宇髄さんと恋仲になってしまったからなのか、こんな時間すら恋しいと感じてしまう。
襖を閉めて、自分の部屋に戻って昨日やりきれなかった薬の仕分けをしようと廊下を歩いていると雛鶴さんに呼び止められた。
「あ、ほの花さん!あの、鬼殺隊の方がお見えになっていますよ。」
鬼殺隊の人?誰だろう?
言われた通り玄関先に向かうと隠の服装をした丸い眼鏡をかけた男性が会釈をしてくれた。
「神楽さん、お待たせしました。隊服が出来上がりましたのでお持ちしました。」
「わぁ、ありがとうございます!」
そうだ、採寸したのにうっかり忘れていた。自分も鬼殺隊なのにまだ一度も任務についていないのでそれすら忘れかけるほど。
薬師として雇われたのか、鬼殺隊として雇われたのか今のままだと分からない。
綺麗に畳まれた隊服を受け取ると自分が鬼殺隊として認めてもらえたみたいで嬉しかった。
「では、私はこれで。」
「え、お茶も出さずにすみません…!」
「お気になさらず!それを着て頂ければ縫製係冥利に尽きます。」
颯爽と帰っていったその人を見送ると折角だから着てみよう!と思い、部屋に戻って着物を脱いだ。
宇髄さんのは派手な隊服だけど、しのぶさんのは可愛い羽織と脚絆だし、きっと人それぞれ作りが違うのだろう。
しかし、綺麗に畳まれたそれを広げてみると私は固まってしまった。
あれ…?布が少ない…。
何か足りないのかな?ひょっとして作り途中の物を間違えて持ってきたのかな?
慌てて外に出て先ほどの隠の人を探すがまぁまぁの時間が経っていたので勿論見当たらない。
私は途方に暮れてその隊服を手に持ったままその場で立ち尽くしてしまった。