第7章 君は陽だまり
そして、そんな俺に堪忍袋の緒が切れたように苦言を呈してきたほの花に面食らう羽目になった。
「さっきから何十回してると思ってるんですかぁあ!!」
「そうは言われてもな、お前のことが好きでたまらねぇんだから仕方ねぇだろ。」
「…わ、私だって…好き、ですけど…。」
「けど?」
「何か、変なんです。宇髄さんと口づけすると胸が苦しくなって、離れたくなくなっちゃうから…。明日から任務でいないなら…我慢できなくなっちゃうかもしれないので…、だ、だから、もうやめてください!!!」
"もうやめてください"の理由がクソ可愛いくて俺の中の欲がむくむくと大きくなってきてしまう。
必死に考えないようにしてみるが、目の前の艶のある栗色の髪から花の香りがして追い打ちをかけられたので潔く離れた。
「…分かった。じゃあ、帰ってきたら良いんだな?」
そんなほの花のために辞めたみたいな言い方は狡いって分かってるが、己の欲まみれの心を知られたくなくて必死に取り繕った。
「は、はい。その、すみません…。」
「何で謝るんだよ。やり過ぎたのは悪かったと思ってる。でも、好きだから触りたくてたまんねぇことは覚えとけよ。」
コクコクと頷くほの花の頭を撫でると、仕方なく前に移動する。
突然、目の前に胡座をかく俺にキョトンとした顔をするが、「ここで見てる分ならいいだろ?」と言うと納得したように満面の笑みを浮かべるほの花。
前に移ったはいいが、ここにいたらほの花のこの顔を眺められるという嬉しさ半分、そんな顔を目の前に手が出せない状況で悲しさ半分というところだ。
「…あの、ちゃんと帰ってきてくださいね。」
「分かってるって。ヘマはしねぇよ。」
「私も一緒に行きたいけど駄目なんですよね?」
「駄目に決まってんだろ。お前はここにいろ。」
ほの花の申し出は受け入れられない。鬼殺隊ではあるが、任務に行かせるのを未だに俺が受け入れられずにいる。
まだお前は俺に守られてりゃいい。
不満そうな顔をしているほの花の頭を撫でると視線を合わせて笑い合った。
此処が俺の帰る場所。
だからお前は生きてないと意味がないんだ。