第33章 世界で一番大切な"継子"※
「昼寝ねぇ…。」
そう言って訝しげに見てやればほの花の目は若干怯えている。
確かにあそこで昼寝をしていたことは知っているので彼女の言い訳が決して嘘ではないことは分かる。
「そうなんです…!気持ちいい日陰でついウトウトしてたら六時間くらい寝てしまいまして…。」
「六時間?!はぁ?!それも外で?」
知ってるくせにわざとそう言って外で寝ていたことを咎めてやろうと意地悪な言葉をぶつけてやると、しっぺ返しを喰らったのは自分の方だっだ。
「す、すみません…!あ、でも!不死川さんが近くにいてくれたので何もありませんでした!」
「……は?不死川…?」
ほの花の口から出たのは俺の名前ではなく、不死川。
俺が其処にいた時は不死川はいなかった。
俺だってそこに三時間近くにいた。確かにほの花は深く寝入っていて俺がいたことは知らないだろうが…。
話しぶりから目覚めた時に不死川がいたと言うことだろう。
何故、不死川が?
「はい!私を探してくれていたとのことで、おはぎを頂きました。」
おはぎを渡すためにほの花を探していたと言うのか?そんなに仲が良かったのか?不死川とほの花は。
確かに今朝方も不死川はほの花を庇うような発言を何度もしていたし、もしかして特別な感情でもあるのか?
苛立ちを拳を握り締めることで抑え込むが、自分の方が長くそばにいたと言うのに知られていないことにどうしようもない敗北感がある。
仕方ないことなのに。
「…おはぎもらったくらいでキャンキャン犬みてぇに尻尾振ってんじゃねぇよ。他の柱に取り入ってどういうつもりだ?あ?」
「…え、…あ、いや…、取り入ったわけでは、ありません。私の師匠は音柱様だけですから。気分を害されたのであれば謝ります。申し訳ありませんでした。」
深々と謝るほの花にすら腹が立ってしまう。
音柱様だぁ?
師匠だぁ?
不死川のことは不死川さんと呼ぶくせに俺のことは苗字ですら呼ばねぇほの花に腹が立って仕方がない。
いや、何より腹が立っているのはこの現状だ。
どうすることもできない現状に1番腹が立つのだ。