第33章 世界で一番大切な"継子"※
「はぁ?!な、…ほの花?!」
スヤスヤと眠りこけているのはあろうことか自分の継子のほの花。
蝶屋敷に行ったのではないのか?
何故此処にいるのだ。
日陰ではあるがこんな炎天下の中で無防備に寝る奴がいるか?仮にも女だ。
しかも、コイツは外見はとんでもなく美しい女子で、誰かがこの姿を見れば間違いなく犯してやりたいと思う筈。
「…お前……馬鹿なのか…?」
あまりに危機感のないほの花に拳を握りしめて打ち震えるが、それと同時にあまりに幸せそうに寝ているものだから起こすのも偲びなくて仕方なくその横に腰を下ろした。
「…仕方ねぇから少しの間、番犬しててやるよ…。光栄に思えよ…?」
そう言って彼女の頬に触れると柔らかくてもちもちのそれが気持ちいい。
先ほどまで顔を見ないようにしていたと言うのに、意図せずに見てしまうと彼女に触れたいと言う欲が再び溢れ出す。
朝方に敷布越しに抱きしめてしまったことを思い出すと申し訳ない気分にもなるが、"今だけ"だと自分を戒めた。
「…なぁ、お前は、なんか知ってんの…?俺のこと。」
何かとは何だ。
それは自分の心の様を正当化したいがためではないのか。
立証してどうなる?
ほの花とはただの師弟関係だし、俺に嫁が三人いることには変わりない。
そして…ほの花に欲情してしまった事実も消えないのだ。
いくら考えたとて堂々巡りのそれを頭の端に寄せるともう一度ほの花を見つめた。
いくら日陰でも今は夏だ。額にじんわりと汗をかいているほの花を見て、首周りから順に彼女の周りの土を掘って冷たい土の中に体を入れていく。
此処で起こすのが良いのは分かっているが、散々顔を見ないようにしてしまったため、此処で顔を合わせるのは気まずいし、自分はそろそろ任務に向かわなければいけない。
体全体が冷たい土に覆われると気持ちよさそうにほほえむほの花に思わず俺も目尻を下げた。
「…可愛がっていた…継子、か。」
確かに彼女は今まで見たどんな女よりも美しくて、不思議な気分にさせられる女だ。
それだけは間違いない。
俺は宣言通り、暫く其処で番犬をすると時間ギリギリで任務に向かったのだった。