第33章 世界で一番大切な"継子"※
昼寝から起きたら其処にいたのは不死川さん。
朝、宇髄さんが蝶屋敷に行ったことを気にしてくれていたと言う。
「はい、聞きました。不死川さんにまでお手数をお掛けして申し訳ありませんでした。」
「咄嗟に出た嘘だァ…。お前に合わさせることになっちまったのは悪かったなァ?」
「な、…とんでもありません…!私が…私が巻き込んだのです…!謝るのならば私です。不死川さんは謝らないでください!」
やっぱり不死川さんは優しい。
そうやって気にしてくれてるところを見ると本当に兄のような温かさを感じる。
自分がこれを始めたのだ。
彼は付き合ってくれているだけなのに…。
「…宇髄さんは…、私と距離を置こうとしているようです。帰ってきた彼は私と目も合わせてくれませんでした。」
「…は?宇髄が?」
「はい。…なので、彼が私を心配すると言うのはきっと無いと思います。なにか勘づいたのかもしれません。」
漸く私は体を起こすと背伸びをしながら立ち上がった。
ふと其処を見るとまるで私が寝ていましたと言わんばかりに土が掘られていて、さながら私の土の棺桶だ。
「…私、そんなに体が重かったでしょうか?めちゃくちゃ土が沈み込んでますね…」
「あぁ?どう見てもお前は重くねぇだろ?これは……、お前が自分でやったんじゃねぇの?土が気持ち良くて無意識に。」
「そう、でしょうか?」
しかし、私の手は土を掘ったほどの汚れはない。
此処には私以外には不死川さんしかいないのだから消去法で不死川さんがやってくれたのかもしれない。
確かに今日は暑かった。
土を掘れば少しだけ暑さを凌げたのは間違いない。優しい彼だから私が気に病むと思って言わないのかもしれない。それならば私が深掘りすることは野暮というものだ。
「…暑かったですもんね、今日。無意識にモグラにでもなったのかもしれませんね…」
「…かもなァ。……でもよ、ほの花。」
隣で腰を下ろしていた不死川さんも立ち上がると私を見下ろした。
「宇髄は記憶を失っていてもお前の師匠に変わりはねぇ。少しくらい頼ってもバチは当たらねェぜ。分かったなァ?」
「……?あはは…、はい。」
宇髄さんに頼れと言うこと?
そんなこと…今の私には難しすぎる。
だからせっかくそう言ってくれた不死川さんの優しさを曖昧に笑って返すことしかできなかった。