第33章 世界で一番大切な"継子"※
ほの花が蝶屋敷に頻繁に出入りしていたことは知っていたので、今朝方のことをちゃんと俺からも話しておかないとと思い、再び訪れたのだが…
「はァ?もう帰ったァ?」
「はい。それはもう多分…15分もいなかったのではないでしょうか?炭治郎くんたちのところにも毎日行ってくれるのですがそこでも5分くらいで帰ったと…」
確かに今は既に昼の一時を過ぎていて遅めだったかもしれないが、こちらも任務後で仮眠してから来たので致し方ない。
だが、栗花落カナヲやらといつも縁側で茶でもしばいてたりもするからてっきり長居するものだと思っていた。
しかし、胡蝶の話を聞くと宇髄はほの花と距離を置こうとしているらしいから、アイツのことだから屋敷に帰るのは申し訳ないと思ってどこかで時間を潰しているだろうと思った。
それならば此処に居ればいいものを。
アイツはいつもどこか遠慮がちで問題を一人で抱え込みやすい。
今だってどこかで一人で悶々と考えているかもしれない。
仕方なく、蝶屋敷を出てほの花を探していると、町で一際でかい男が歩いているのが目に入った。
宇髄だ。
咄嗟に隠れて、隣を確認するが近くにはほの花の姿はない。
それどころか嫁の姿もないので、どうやら一人のようだった。
アイツならほの花の居場所を知ってるかとと思ったが、今の宇髄は記憶が曖昧だし、ほの花とのことなど分かるわけがないか…。
しかし、何故だかボーッとした様子なのに足取りはしっかりとしているその男がどこに行くのか気になって十分に距離を空けて後をつけて行った。
すると暫く歩いていくと中央に池のようなものがある広場に出た。
木々が生い茂った其処は整備されているようで綺麗な場所だったが、こんなところがあるなんて知らなかった。
こんなところで何の用事があるのやら…と思い、入口付近で様子を見ていると木陰で立ち止まったかと思うとそこに座った宇髄。
黄昏に来たとでも言うのか?よく分からないが、座ったかと思うとしきりに横を向いて微笑んでいるその男にハッとした。
まさか…?
いや、でも…あんなところで一人で座り込む理由は?
俺は根比べだと心を決めて、木陰からその様子を見ることにした。