第33章 世界で一番大切な"継子"※
──ほの花、絶対にそばにいろよな?
あれ?宇髄さん…?何で?
──俺以外の男のところに行ったらマジで許さねぇし、その男をぶっ殺す!
怖い怖い…。でも…ああ、"宇髄さん"だ。
──愛してる、ほの花。
私も…愛してるよ。ごめんね…?
目の前にいる彼は優しく私に笑いかけてくれた。
ちゃんと私のことを見つめて、手を伸ばしてくれた。
だからそれが夢なのだとすぐに気付いたけど、覚めて欲しくなかったからそのまま目を閉じていた。
夢で会えるならずっと眠っていたい。
幸せだった頃に戻れるならずっと夢の中にいたい。
まだそこに居て。お願い、あと少し。
そう思って手を伸ばしてくれている宇髄さんに向かって私も手を伸ばすと、誰かにその手を掴まれた。
それは夢とは思えないほど、ちゃんとした感触で。
現実か夢なのかわからない中、目を開けると呆れた顔をした不死川さんがそこに居た。
「…不死川さん…?」
「おい、こんなところで寝るなァ。仮にも女だぞ、お前はァ?誰かに寝込み襲われたらどうするんだァ?」
彼越しに見る空はすっかり橙色が混じっていて、太陽も赤く染まっていた。
どれくらい寝てしまったのだろうか。
いや、結構寝てしまった。
炎天下の中昼寝したのだから当然だが、身体は汗だくで気持ち悪い。
「…凄い寝ちゃったみたいです…。」
「俺が来てからも一時間経ってるからなァ?こんなところで寝るなんざ、……前の宇髄が知ったら怒られるぜェ?」
「…今はもう怒られませんから。」
そう。私とはもう継子として以外は関わらないようにしていくはずだし、彼が必要以上に私に介入することはなくなるだろう。
当たり前のことだ。
「あ、それより…すみません!忙しいのに私が起きるまで此処にいて下さったんですか?ごめんなさい!」
「お前を探してたんだァ。今朝方、宇髄が胡蝶のとこにやってきたことでよォ。聞いたんだろ?胡蝶から。」
一時間も此処にいてくれたのならば、私のためだとは思ったが、宇髄さんのことで心配してくれて探してくれていたのだろう。
炭治郎は苦手かも知れないけど、不死川さんはやっぱりとても優しい。
いつか炭治郎にも分かってもらえると嬉しいな。