第7章 君は陽だまり
一度したら止まらないなんてことはよくあることだ。まさにいま俺はそれに陥っている。
女として好きだと気づいてしまって以来、夢にまでほの花が出てきて悶々とした毎日を過ごしてきたが、無事に恋仲になった今、タガが外れたように触れたくてたまらない。
目の前にいれば抱きしめたい。
そして一度口づけを交わしてしまえば、こちらを向いただけでも己のそれと合わせたくてたまらないのだ。
最早同化するんじゃねぇかと思うほど体を後ろから密着させると頬を火照らせて恥ずかしそうに目を逸らすほの花が可愛いのなんのって。
漏れ出る声が妙に厭らしく聞こえてしまうのも男たるもの仕方ないことだ。
だが、流石に恋仲になったばかりで押し倒して、ほの花に恐怖を与えようものなら俺は胡蝶に毒殺される。
それだけじゃねぇ。
この家の三人の元嫁たちにチクチクと嫌味を言われて人権は無くなるだろう。
唯一、なんだかんだでほの花の鈍さを心得ている正宗たちだけが俺の味方をしてくれる気がした。アイツらは俺が鬼殺隊でなければ普通の飲み友達のような関係性になっただろう。(いや、今も近い関係だが)
明日の任務を言い渡されたので、そのために早く休まないといけないのだが、完璧に穏やかな睡眠をとるためにはほの花を摂取しなければと部屋で待っていた。
なんの迷いもなく俺を受け入れてくれるのは有難い限りだが、危機管理はない。…なさすぎる。
俺に襲われてもいいのだろうか。
夜に部屋に招き入れるなんて(勝手に入ってただけ)据え膳食わぬは何とやらだ。
理由をつけては口づけをしまくったせいで、こんな経験をついさっき初めてしたほの花が真っ赤な顔をして遂に拒否してきた。
それは至極当然なのだが、一度後ろから抱きしめてしまえば離したくない。
部屋にこれ見よがしにやりかけの薬の瓶が置いてあったので「やりながらでいい。」といえば胡座をかいた足の上に乗せてやり、そのまま薬の仕分けをし出したほの花。
しかし、当たり前だが、こんな体勢で仕事なんてしたことないだろう。チラチラと後ろを向くほの花の顔を捕まえては口づけをし続けた。